トラウマとの再開

イタイよぅイタイよぅ
めそめそ、めそめそ
"君 いつでも 泣いてる"
嫌だよぅ嫌だよぅ
めそめそ、めそめそ
"そうだ 今日から 君はめそめそ!!"
めそめそ?
"君の 新しい 名前!!"
酷いよぅ酷いよぅ
めそめそ、めそめそ
"ほぉらまた鳴いた"
めそめそ、めそめそ
めそめそ、めそめそ
めそ めそ





初出勤。
ドキドキとした心に落ち着け、落ち着けと脳みそから何度も指示を出しながら、ふぅと息を吐き出した。
ぎゅっと目の前にある鉄製のドアノブを掴むと思っていたより冷たい。
きっとこのドアの向こうは希望に満ち溢れた世界に違いない。
これからの人生は楽しい物に違いないんだ。
ドアノブを捻り、前へ押し出すと妙に重たいドアはギギと音を立てた。
その音にびっくりしながらもかろうじて「失礼します」と声が出た。
部屋の中は眩しくて中に誰か人がいる、としか判別出来なかった。
その誰かも分からない人になまえは深々と頭を下げて、丁寧な口調で

「初めましてなまえと申します。本日からこちらにお世話になります。よろしくお願いします。」

そういうと頭をゆっくり上げた。
大分目が慣れたようだ。
ちゃんと目の前に立つ黒と白が見える。
この黒と白が今日からなまえの上司になる。初対面のハズだ、ハズなのに何故か二人の顔を見た瞬間、冷や汗が止まらなかった。
随分と整った顔立ちの二人だ。お互いの顔を鏡で写したみたいにそっくりで、気味が悪い。
違うと言えば服の色と表情だ。
白は口角を吊り上げ、ぞっとするような笑顔で。
黒は口角を吊り下げ、びくっとするような仏頂面だ。
そんな白はなまえの顔をまじまじと見つめうーん、と首を傾げ、何秒か考え込んでいた様子だったか、すぐに「ああ」と小さく呟いてあの貼付けたような笑顔で、あの大きな口で、毒を吐く。
きっと彼は本当は毒を持った雷蜘蛛か何かだろう。
だからなまえの身体は彼の吐いた毒で動かなくなってしまったのだ。

「やあ!! 久しぶり!!めそめそじゃないか」


めそめそ、めそめそ


「え?」
ドクン、ドクン、ドクン

頭の中に手を突っ込まれて引き出しを無理矢理こじ開けられたような、そんな気分だった。





20121023
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