「ただいま、」
「おー、おかえり」

アカギが玄関から入ってくる。
カイジは少しドキッとはしたものの、平静を装って迎えた。
そしてアカギはカイジの隣に座り、もはや恒例となった帰宅後のキスをする。静かに唇を合わせて、その感触にしばし浸った。しかしここで、イレギュラーな発想がカイジを襲う―分かりやすく言うと少々ムラついた。離れている間が短かろうが長かろうが、アカギの匂いを感じられる時は常に幸福感でいっぱいなのだ。
そしてカイジはキスを終えたあとついうっかりと、アカギの唇をぺろりと舐めた。

「あっ…!わりぃ、えっと…」
「びっくりした…」

アカギは笑っているが、カイジは慌てたままだった。

「その、ほんと…ごめん、」
「カイジさん、なんで謝ってるの?…キスするの嫌いなのか?」
「違う!」
「そこは即答なんだ…」

ふうん、とアカギは納得のいかない目でカイジを見る。
煙草を一本だしてくわえ、火をつける。
カイジはアカギが煙草を吸う動作がなんとなく好きで、つい目で追いかけた。
ふ、と煙を吐いてからアカギはまたカイジを見る。

「カイジさんは我慢してる」

びくっ、とカイジの肩が揺れる。
ひた隠しにしていたはずが、思いっきりバレていた。カイジはもとより隠し事はがあまり得意ではないのだ。

「もっと触りたいとか、あわよくば…とか、きっとそういうことを考えてるんだろ」
「えっ…あっ、……」

カイジは目を伏せる。やっぱり、という気持ちが胸を渦巻いた。やっぱりアカギは、そういうことをしたくないのだろう。そう思った。

カイジの手にアカギの手が、そっと触れる。

「いいよ、」

カイジは突然のことにゆるく口を開けた。
アカギは頬をほんのり赤く染め、目線を逸らしながら言った。

「いいって言ってる…好きに、触ってよ」

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