むかしむかし、あるところに。
綺麗な海の底に、人知れず生活している人魚たちがおりました。
今日は王族の末っ子、しげるの15歳の誕生日です。人魚は15歳になるとようやく、海の中から出ることを許されるのです。

「おい、ヘマだけはすんなよ」
「わかってるよ聖也さん。人間に見られちゃいけないんだろ」
「一条でいい!!今日の海は大しけだ。岩にぶつかったりとかするなよ!!」

兄弟のうちの一人、一条はなんだかんだ言っていつもしげるを心配してくれています。これが所謂ツンデレというやつなのだろうか、としげるは思いました。
青い海をゆらゆらと泳いで海面を目指している今も、一条はちらちらとこちらを見ています。本人は隠しているつもりでしょうが、心配が行動からだだ漏れていました。
しげるは手をあげて(わかってる)と意思表示をして、生まれて初めて海面を越えました。
ざぱ、と頭をあげるとそこには、生まれて初めての光景が広がっていました。しかし美しい海は一条の言う通り荒れに荒れており、空気中デビューにはいささかタイミングが悪かったようです。

(あ、あれが聖也さんの言ってた…人間の乗り物)

しげるがふと目を向けた先には、大きな船が荒波に揺られていました。そして甲板には、ひとりしがみつく人間の姿が。
危ない、としげるが思った瞬間、その人間は大きな揺れを受けて海へと投げ出されてしまいました。しげるはとっさに海中へ潜り、海水に飲み込まれた人間の腕を掴みました。人間は海中では呼吸ができないので、しげるはその人間の頭を海中から引き上げます。幸いにも気を失っているだけのようで、しげるの姿を見たわけでは無さそうです。しげるはそのまま、人間を引っ張って海岸へと泳いでゆきました。

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