やって、しまった。
伊藤開司21歳男性、まあ仕方がないといってしまえばおしまいかもしれないが。
カイジは生気を失った目で目の前の使用後ティッシュを眺める。

「ごめん……アカギ」

口に出してその名を呼べば罪悪感は更に増す。今の状況を端的に言えば、カイジは恋人を想いながら自慰をした。それだけのことなのだが、アカギは先日どこぞの組の者に襲われかけて怖い思いをしたのだ。それを考えるといくらカイジならいいと言われたって、カイジはアカギに性的な意味を含むスキンシップをとることができなかった。キスしたり抱き合ったりはするが、それ以上に関しては完全にストッパーをかけていたつもりだった。
そして実際はこの間寝顔を眺めた時、カイジは完全にアカギで反応していたのだ。朝だからというわけではなく、アカギの無防備な寝顔を眺めていた結果のあの騒ぎだったのだ。それ以来カイジの頭ではアカギが蕩けた表情であれやこれやと、するような妄想が繰り広げられるまでになってしまった。
カイジはその度に戦った。こんなことを考えてはアカギに合わせる顔がないと。性がらみのことで嫌な思いをしたことがあるアカギに対して、性欲をさらけ出してはならないと考えたからだ。アカギ本人が認めても、心の奥底では恐怖を感じているかもしれないのだ。
ティッシュをごみ箱に放り込み、手を洗う。
音をたてて流れ落ちる水と洗われる自分の手を眺める。この水と一緒に、白濁と一緒に、邪な考えが排水口に流れていけばいいのに。
そう考えて、カイジは長い溜め息をついた。
好きな気持ちは本物だ。しかし、性的なことに関してどこまでいっていいのか、線引きがまったくわからない。抱き合うことやキスをすることでだって、お互いに満足感は得られるのだ。反面、この手でアカギを愛したいという気持ちも抑えられなくて。


次にアカギがやってくるのを楽しみ半分気まずさ半分に感じながら、カイジはこうした生活を送っていたのだった。



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