アカギは黙ってしまった。
それを機に、カイジが口を開く。
「だいたいなんなんだよ!!俺の気も知らないでほっつき歩いて、挙げ句の果てにこんなにぼろぼろで帰ってきやがって…っ」
元より感情の表れが少ないためか、感情を抑える傾向にあるアカギとは真逆であるカイジ。怒鳴り声が徐々に上擦り、涙を惜し気もなく溢す。その様相に、アカギも少々目を見開いた。
「しかもこんな、抱けとかっ…なんなんだよっ…!!」
カイジはそう言い切ると、アカギとの距離を詰める。アカギはまた俯いてしまっていた。肩で息をしつつも、ある程度落ち着いたカイジはそっと手を伸ばし、雨に冷えたアカギの左頬に触れる。瞬間、反射的にアカギの身体がびくりと震えた。
「…触られてこんな反応する状態なのに、本心から抱かれたいなんて思える訳がねえ…」
カイジは見逃さなかった。触れた瞬間のアカギの目が動揺、恐怖の色を帯びていたことを。
するりと手を離し、カイジもまた俯いた。
「何があったか…言いたくなかったら言わなくてもいいけど、俺がオマエを心配してたことだけはわかってくれよ…」
アカギもそれ以上は何も言ってこなかった。暫しの沈黙の後、カイジはアカギに風呂をすすめた。
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アカギが風呂からあがってきたので、テーブルを挟んで座った。少しの間の後、アカギは口を開いた。
「俺が麻雀で暮らしてることは知ってるよな?」
カイジは頷く。アカギもそれを見て話を続けた。
「最近、ある組に声を掛けられて代打ちをしていた。いつもは泊まらないんだけど今回は泊まっていったんだ。そしたらそこの組長が物好きでね──」
昨晩、襲われかけた。それで逃げた、とアカギは言う。
経緯はどうやらこれくらいのようだ。
「…で、なんで抱けってなったんだよ」
カイジは核心を突く。アカギは暫く黙っていたが、ゆっくりと重い口を開いた。
「別に男に寄られるのは今に始まったことじゃない。抱かせたことはないけど、今まで何回も物好きが寄ってきたことがあった」
「…何が言いたいんだよ」
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