そうしてカイジはアカギの居ない日々を送った。アカギの居ない部屋は少し広くて、そして冷たかった。やはりどうしても、彼が居たときの事を考えてしまう。カイジの作った飯をまずくないと言って食べた姿や、洗濯物を干す姿、部屋に入ってきたときの無表情。カイジにとっては鉄面皮のなかの些細な表情の変化が嬉しくもあるのだ。
カイジはぼんやりと床に座りながら煙草に火をつける。

(…俺は)

どうしたいのか。どうしてほしいのか。
そんなのもう、決まっているのだ。

(アカギに笑っていてほしい…できたら、俺の傍で)
しかしそれはアカギの意思を損ねることにはならないのだろうか?
アカギがこの野良猫のような生活を、自ら望んでいるのだとしたら。カイジの都合でここに縛り付けてしまうのがアカギにとって負担なのだとしたら。
それらは真実味の拭えないことで、きっとその通りなのだろうと思いつつもカイジの気持ちはじわじわと膨らんでいく。
…紫煙がふらふらと消えゆく、その様子に反比例するような。
一度自らの中で肯定してしまえば、あとはその気持ちは育っていくだけなのだ。思考の種を一度芽生えさせてしまえば、感情を養分にして時間の経過とともにぐんぐん大きくなっていく。人間はきっと、そうなるようにできている。

(…好き、なんだ)

カイジはアカギを人間として好きであることを、肯定した。
気持ちがしっかりと、根をはり始める。もう同性とか、どうだっていい。アカギだから好きなのだ。しかしアカギは気味悪がらないだろうか。

「…重症だなぁ〜」

灰皿に煙草をねじ込み、頭を抱えて寝転がる。
とにもかくにも今は、アカギの存在を確かめたくて堪らなかった。

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