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アカギが去ってから一週間が過ぎた。カイジは再び、普段通りの生活の歯車に飲まれていた。しかしこの一週間、カイジはどこか活力を失っている。
というのもカイジはあの晩以来、事ある毎にアカギのことを思い出していたのだった。単調な日常に現れた一人のイレギュラーに思わず惹かれているのだろうか、とカイジは考える。それにしても、あれくらいの時間を共にしただけでこんなにも気になるものなのだろうか?言葉だってそう多く交わしたわけではない。
彼はまた来てもいいかと訊いた。一定の場所にとどまることのないという彼がまた来てもいいかと訊くのは、どういうことを示すのか。
考えても考えても、答えと言えるようなものは出てこない。カイジは頭を抱えた。すると急に電気の光が陰り──

「カイジさん?」
「え、うわあああ!?」

アカギが顔を覗き込んできた。

「なん、おま」
「居るみたいでしたけどインターホン鳴らしても気づかないし、玄関開けて声かけても気づかなかったのであがらせてもらいましたよ」
「…悪い」

真顔で静かに捲し立てるアカギに、カイジは謝るしかない。
アカギは今度は─今晩は晴れているから当然だが─濡れておらず、以前とあまり色合いの変わらないような服装をしていた。
自から許可しておいてなんだが、カイジは恐る恐る来た理由を訊いた。
するとアカギは少し考えたあと、

「なんとなく、ですね」

と言った。

「なんとなくかよ…来ていいっつったけどさ」
「特に理由はありません。強いて言えば…来たかったから、ですかね」

来たかった。
その単語にカイジの心が跳ねる。

「カイジさんからは俺と似たにおいがします」

くく、と笑いながらアカギは続けた。

「博徒の香り…でもそれ以前に、カイジさんの所は落ち着く気がして」

また泊まってもいいですか?と問うアカギに、カイジは勿論だと返すのだった。

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