湯をはりおわるまでにカイジがアカギから得られた個人情報はわずかだった。特定の住居を持っていないこと、大体は麻雀を打って生きていること、カイジより年下であること。とはいえ背格好が大して変わらないことから、年齢も1つか2つしか変わらないだろう。

カイジは風呂場へアカギを連れていった後、着替えるものとバスタオルを探す。…が、Tシャツが見当たらない。この豪雨続きの日々で洗濯のサイクルが狂いっぱなしなのだ。今干しているTシャツが乾くまで、毛布やタオルを羽織らせるしかなかった。
脱衣場へと向かい、ジャージの下とバスタオルを置く。

カイジには気になるところがあった。アカギの尋常ではない才気に気づいていたのだ。
麻雀を打って生きていると言っていたが、路地で見つけた時のあの眼、あの雰囲気──きっと化け物のような雀士に違いない。
それと今こうして部屋にあげているのに関係があるのかは、わからないが。ギャンブルに生きる者同士、何かを感じたのかもしれない。カイジはそう考えることにした。

暫くするとガチャリと脱衣場のドアが開いた。

「ああ、わりぃけど今Tシャツが乾いてなくて」
「構いませんよ、この雨じゃ仕方がない」

アカギはカイジのジャージを穿き、頭にタオルをかけて拭きながら出てきた。ふわり、とカイジには嗅ぎなれたシャンプーの香りが漂う。嗅ぎなれた香りでも、目の前のあまり知らない美形の男から香るとなんとなく変な感じがした。纏う者によってこんなにも違うものか。
ふとカイジはアカギの右肩に傷がついているのに思わず目をやった。その瞬間、限りなく暗い気持ちが胸に沈み込んで、じんわりと刺すように浸透する。慌てて目を逸らしたがアカギは気が付いたらしく、くく、と笑った。

「これですか?これは」
「いい、いい、言わなくていいからっ」

そういう傷なんだろ、とカイジは言った。
突然言葉を遮られてアカギは驚いたが、カイジの頬と指の傷痕を見て、表情を戻した。
カイジはまだ、傷を見たときに渦巻いた気持ちの名前を決めていなかった。

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