小説 | ナノ
「ふー、よいしょっと」
私の名は、イ・ユンシェ。
地の部族出身の次期将軍だ。
ただし、次期将軍であって現将軍ではない。
何故なら我が地の部族の将軍、グンテ様はまだまだ現役である上に、戦場こそが自分の生きる場だと考えていらっしゃるからだ。
「はてさて、いつ私が将軍になれることやら…」
女なのにおかしいって?
ほっとけ、私はこの才能を見出してくれたユホン様やグンテ様、イル様を尊敬し、忠誠を尽くしているのだ。
「ユンシェ〜、ため息つくと幸せが逃げるんですよ〜」
「スウォン様…、もう出発するんですからあんまりのんびりしてちゃダメですよ」
そしてそんな私の現在の仕事が、幼馴染兼王族であるスウォン様の専属護衛である。
私とスウォン様、ヨナ姫様、そして風の将軍ソン・ハクは幼い頃緋龍城で共に育った幼馴染なのである。
「ユンシェ、スウォンでいいですってば」
「よくないです、スウォン様。」
ハクがヨナ姫様を、私がスウォン様を。幼馴染同士で護っているなんて面白い関係だなんて思う。
そんなヨナ姫様も今年で16歳となる。本日はヨナ姫様をお祝いする為、緋龍城へと向かうのだ。
「きっとヨナ姫様が一生懸命おめかしして、迎えてくれますよ、スウォン様」
「ふふ、そうだね可愛いよねヨナは。」
そう話しながら馬へと乗り緋龍城へと向かった、スウォン一行を見て
「はぁ、今日もスウォン様とユンシェ様絵になるわぁ…」
「ほんと、絵に描いたような美男美女よね…」
なんて言っているとは思ってもいなかった。
「スウォン!!」
「ヨナ!」
緋龍城に着けばやはりいの一番に、めかし込んだヨナ姫様の姿が見えた。
真っ赤になり、スウォン様と話すヨナ姫様の後ろには、また背が伸びたハクの姿があった。
畜生、男はいいよなスクスク育ちやがって…と睨んでいると、チョイチョイとこっちに来いと言わんばかりに手を振ってきた。
何を考えてるのか、私はスウォン様の護衛なのだからこの場を外すわけにはいかない。
ヨナ姫様も一緒ならば尚更だ。
「行ってきていいですよユンシェ」
「はっ!?スウォン様なにを…!」
「ハクも久々に貴女と話したいんでしょう」
それっ!と言わんばかりに背中を押され、ハクの前に出された。
「相変わらず、ちっちぇーな」
「数年振りの再会の第一声がそれ?」
相も変わらず喧嘩腰で来たハクに同じように返してやれば、ニヤリと笑ってガツンと拳を合わせる。
「久しぶりに手合わせしようぜ」
「いいね!お手柔らかに、ソン・ハク将軍」
そう言って稽古場に行けば、その呼び方やめろと言われた。
それからハクやスウォン様と模擬戦をしたり、みんなでお茶をしたりして、一週間を過ごした。
そして本日…
ヨナ姫様の16歳の生誕祭である。
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