シュウ+カイ


*イナクロ後 

「――良かった、ちゃんとまた、取り戻せたんだね」

あの時のように。

僕は目を閉じて僕の闇を取り払ってくれた遠い地にいるあの少年に思いを馳せた。

するとガサガサと後ろで葉っぱが音をたてた。

「――っ誰?」

フィフスセクターが無くなった今、この島にいるのは僕しかいない。
僕は音がした方へ振り返った。

「……シュウ?」
「――、カイ…」

そこにいたのはかつての仲間、カイだった。


「久しぶりだね。元気だった?」

僕達は石像の近くで腰をおろしていた。
傍にはカイの匂いを嗅ぎ付けたのかヤギもいた。

「まぁね。まぁ最近はサッカー禁止令とかよくわかんないもの出てストレスたまってたけど撤廃されたし」
「そっか。ここは本州から離れているせいで影響はなかったけど天馬達が色々頑張ってたみたいだよ」
「…来たのか、あいつらも」

ずっとヤギと戯れていたカイが天馬の名前を聞くと目を見張った。

「うん。…また何か大切なものを守ろうとしてたみたい」
「…そっか。大変だな、あいつらも」
「うん…けど驚いたなぁ、まさかまたカイに会えるなんて」
「それはこっちのセリフだよ。まだここに居るとはね」
「まぁね。それでカイは何しに来たの?」
「んー?ほら、俺んちこの島の管理人みたいなもんだからさ、ちょっと様子見。シュウこそどうしてたんだ?」
「僕?僕は昔と変わらず自然と一緒に過ごしてたよ」
「相変わらずだなぁ…それで、ちゃんと会えたのか?」
「会うって?」
「…妹に」

カイの言葉に思わず固まった。
けれど笑顔でそれを誤魔化した。

「妹?何の事?」

しかしカイは僕をじっと見つめると大きく息を吐いた。

「シュウ…俺はチームにいた時も参謀役みたいのやってたしお前の傍に一番いたのは俺だったからちょっとは信頼されていたと思ってたけど…勘違いだった?」
「…何の事か、よくわからないな」
「…本当はさ、お前の方から話してくれるの待ってたんだけどお前全然話さないし。けど雷門との試合後はスッキリした顔してたからやっとお前もいけるのかと思ったら普通にまだいるし。…まだ何か心残りがあるのか?」

カイの表情ははいつもの飄々としたものではなく、何かを見透かすような鋭い目をしていた。そう言えば前からカイに隠し事はすぐにバレてたなぁ。
僕は強張っていた肩の力を抜いた。

「そっか…知ってたんだね、君は最初から。」
「………」
「…会えたよ、あの子に。ホント、僕にはもったいないくらいよく出来た妹だよ」
「じゃあなんで…」
「うーん…やっぱコレかな?」

僕は傍にあったボールをカイの方へ蹴り渡した。

「本当はまた、君達とあの時の様な試合がしたいんだ」

ただただ、純粋に楽しいサッカーを。

「…妹はどうするんだよ」
「勿論、あの子も一緒に。」

木がさわさわと音をたてた。
木の上であの子が微笑んでいるのが目に入った。

ごめんね、ずっと気付かなくて。
だから今度は君も、一緒にサッカーを楽しんでくれたらって思うんだ。

僕があの子に思いを馳せているとカイが大きくため息を吐いた。

「まったく…ホント、相変わらずだよ、俺達のキャプテンは。」
「カイ?」
「今度は、皆の事も連れてくるさ」

だからそれまで妹と楽しく過ごしていなよ

「……ありがとっカイ!」

カイは一緒に久しぶりにサッカーをした後本州へと帰っていった。


「…いい仲間がいるんだね、お兄ちゃん」
「うん…最高の仲間だよ!」

- 136 -
[prev] | [next]


back
TOP

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -