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『大人になったら、何になりたい?』


「え?」

ラグナロクも終わり、サル達は約束通りSSC制御ワクチンを受けた。
これでサル達の寿命も平均レベルまで延びる。
それを見越しての事だろう。
雷門、エルドラド、フェーダの皆でお別れ会をしている時にふと天馬が皆に尋ねた。

「そう言う天馬は?」
「俺は勿論サッカー選手!」
「だと思った」
「私は勿論ギリスのお嫁さんよ」
「メイア…っ」

各々が楽しそうに自分の夢を語るなか浮かない顔をしている少年がいた。

「どうしたの、サル」
「…だって、今まで僕達の寿命は二十歳までって言われてたんだ。急に大人になれるって言われても実感ないよ」
「そっか…じゃあサルもサッカー選手目指しなよ!」
「え、」
「だってあんなにサッカー上手いんだからもったいないよ!サルもサッカー、好きだろ?」
「そりゃ嫌いじゃないけど…」
「じゃあいいじゃん!」

戸惑うサルをよそに天馬はあっけらかんと言い放った。

「…ホント、君って面白いね。まぁ考えとくよ」
「うん!あ、ねぇフェイは――」
「しー」

後ろを振り返るとフェイが黄名子に寄りかかって寝ていた。

「色々あったから疲れちゃったみたいやんね。キャプテン、悪いけどちょっとだけ寝かせてあげて」

そう言って苦笑する黄名子の顔は母親の顔だった。

「そっか…あ、じゃあ黄名子の夢は?」
「天馬…彼女の未来はもう決まっているようなものだろ?それを今更…」
「うちの夢は大好きな人とあったかい家庭を作ることやんね」

サルの言葉を遮って黄名子はそう言った。

「家族に寂しい思いなんか絶対にさせない。飽きるくらい家族皆の事を愛し続けていく。これがうちの夢やんね」
「黄名子…」
「大丈ー夫。こんな可愛い子1人になんか出来ないやんね。絶対にうちは未来を変えてみせるよ」

ね、と軽く微笑むと黄名子はフェイの頭を柔らかく撫でた。
しかしそこには面白くなさそうに仏頂面をしている人がいた。

「どうしたのサル、凄い顔だよ」
「だって、君が未来を変えたら僕達はフェイと会えないじゃないか」
「え?」
「フェイは1人になったから僕達と出会えたんだ。君の言う通り未来が変われば僕達が出会う事はない。…フェイを気に入ってるのは君だけだと思わないでよね」

黄名子は一瞬サルの言い分に呆気を取られたがすぐに笑顔になった。

「サルは本当にフェイの事が好きやんね」
「…気に入ってるだけだよ」
「でも大丈夫」
「?」
「例え未来が変わってもフェイもサル達もサッカー好きなんだからきっと違う形で会えるやんね」
「どこにそんな確証が…」
「うちが作ってみせるよ」
「!」
「皆が皆、笑っていられる未来をうちは作ってみせるやんね」

そう言って黄名子はフェイ、サル、そして最後に円堂達と話しているアスレイに目を向けて微笑んだ。

「…嘘をつく大人は嫌いだよ」
「今のうちはだだの中学生やんね。だから――」

未来で待ってて

ヤサシイミライを作ってみせるから


『ねぇ君もサッカーやるの?』
『……君は?』
『僕はフェイ!一緒にサッカーやろ!』
『フェーイ!どこやんね?』
『あ、お母さん!』
『あれ、お友達?お名前は?』
『僕は――』


(ちゃんと約束、守ったやんね)


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