フェイ+黄名子※


「フェーイ!!コレあげるやんね!!」
「え、」

黄名子が差し出したのはバレンタイン仕様のチョコレートだった。
しかし、

「えっと…もう皆からのチョコはもらったよ?」

そう言うフェイの手には言葉通りチョコが握られていた。

「違う違う。それは女の子達皆からのやつやんね。これはうちからフェイへ!!」
「え…」

黄名子は半ば押し付けるようにフェイにチョコを渡した。

「黄名子…君まさかわざわざマネ達の人とは別に皆の分作ったの?そんな気使わなくても…」
「違うやんね!!うちが一人で作ったのはフェイにだけやんね!!」
「え、」

黄名子が強く言い切るとフェイは若干戸惑った顔をした。

「あ、ほら、フェイ最近頑張ってるからそのご褒美やんね!!」
「そりゃ頑張るさ。サッカーを守る為だからね。でもそれなら黄名子や天馬だって…」

まずいと思ったのか黄名子が慌てたように言い訳をするがフェイは釈然としなかった。

「えーとえーと…とにかく!!うちフェイに会えて良かったやんね!!いつかはお別れしなきゃだけどそれでもうちフェイに会えて嬉しいやんね。だから〜…そうだ!!感謝チョコみたいなもんやんね。…フェイ、生まれてきてくれて、うちと出会ってくれてありがとうね」
「黄名子…」

そう微笑む黄名子の顔は優しかった。

まるで愛しい我が子を見ているかのように。

「黄名…」
「用はそれだけ!!うちキャプテン達の所に行ってくるやんね!!」

黄名子はフェイが何か言いかけるのを遮って天馬達の所へ走っていった。
そこにはフェイと『感謝チョコ』がポツンと残された。

(大丈夫、きっと普通に渡せたやんね)

黄名子は緊張した体をほぐすかのように無我夢中でボールを蹴っていた。

―未来の自分はフェイを愛してあげる事が出来なかった。
だからその分今の自分がフェイの事を愛したいと思いフェイにありったけの愛情を込めてチョコを送ったのだ。

―時空最強イレブンのメンバーも増えてきた。
自分の正体を明かし、元の時代に戻るのもそう遠くないだろう。
だからせめて可能な限りあの子に愛情を注ぎたいのだ。

(大好きやんね、フェイ)

これも一つのバレンタイン。


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