雨宿り(晴杏)


「っもういい!!晴矢の馬鹿!!」
「んだと!?って、オイ!!」

バン!!

あたしは気がつくと園を飛び出していた。

晴矢と喧嘩した。
きっかけは些細な事だった。
けれど二人共意地っ張りな性格が災いにしてか、どちらも折れず、いつの間にか大喧嘩に発展していた。


―晴矢の馬鹿、アホ、意地っ張り、単細胞、晴矢の…

「晴矢の……チューリップ頭ーっ!!」

園を飛び出した後あたしは歩きながら心の中で晴矢の悪口を羅列し、最後に思いっきり道端で叫んだ。
周りの人が驚いていたけど気にしない。
すると少しスッキリして頭に上った血がだんだん冷めてきた。
(はぁーっ…何でこんな事になっちゃったんだろ…晴矢、怒ってるよね…)
あたしは一人自己嫌悪に陥っていた。
と、その時、

ポツ…ポツ……ザーッ

「へ?ちょ、何、ウソっ雨!?」
さっきまで快晴だった空から一変して急にどしゃ降りになった。
あたしは慌てて雨宿り出来る場所を探した。
「なんでこんな時に限って雨なんか降んのよ〜!!しかもこの辺りって住宅街で雨宿りできそうな場所ないし…あ、公園見っけ。」
あたしはバシャバシャと雨の中雨宿りできそうな場所を探して走っていると細長いトンネルがある公園を見つけた。
狭いけど仕方ない。
ここ以外雨宿りできそうな場所がないのでそこに身を潜めた。
「あーもーサイアク…服ビショビショだしなんかベタベタしてキモチ悪い…早く止まないかな…」

暫くそこで大人しく外の雨を眺めていたけれど止む様子はなかった。
むしろさっきよりも雨足が強くなっている気がする。

「さっきまであんなに晴れてたのに…まるであたしの心みたい……って、うわー、恥ず…どこぞの詩人かっての…」
あたしは思わず漏れた自分の言葉に恥ずかしくなり顔を膝にうずめた。
「てかホントに止まなかったらどうしよう…まさかこんなとこで野宿…?」
そう思うと治まっていた晴矢への怒りが再び膨れあがってきた。

―だいたい晴矢が悪いのよ、晴矢があんな意地張るから…だから…だから早く…

「早く迎えに来なさいよ…馬鹿晴矢ぁ…」
「誰が馬鹿だって?」
「え…」
居るはずのない声が上から降ってきてあたしは顔を上げた。
「ったく…こんなとこにいたのかよ…」
「はる…やぁ…?」
目の前にはあたしと同じようにビショ濡れになって息を切らしている晴矢がいた。
雨のせいで頭のチューリップはへたっている。
雨に濡れた晴矢はなんだか少し…色っぽかった。
「なんで…」
「あー?なんでってお前…つーか…」
「?」
晴矢があたしをジトッとした目で見た。
「はぁーっ、…まぁいーや、とりあえずそっち詰めろ。」
「あ、うん…」
晴矢がため息を吐いた理由は分からなかったけどとりあえず晴矢が座れる場所を作った。
晴矢はあたしの隣に座ると自分のパーカーを脱いでギューッと絞った。
滴る水の量でどれだけ晴矢がこの雨の中走り回っていたのかが分かる。
絞り終えたのか晴矢はパンッと広げた後そのパーカーをあたしにいきなり羽織らせ、そっぽを向いた。
「へ…って、ちょ、何!?こんなビショ濡れのパーカーなんていらないんだけど!?」
「いーからそれ着てろ」
「だからなんで!?」
「お前なぁ…」
また晴矢は大きくため息を吐いた。
「自分の格好見てみろよ」
「はぁ〜?」
晴矢が呆れた様に言うのが少し、いやかなりムカついたけどあたしは自分の格好を見た。
「別に変なとこなんて……!?」
今日は比較的暑かったので薄着だった。
しかも雨に濡れたせいであたしの下着が思いっきり透けていた。
「見たっ!?」
「………」
あたしは慌てて晴矢のパーカーを着こんだ。
あたしの問いに晴矢は答えなかった。
「見たのね!?」
「うっせーなー…一緒に住んでるんだから今更だろ」
「なっ!?サイテー!!晴矢のスケベ!!」
「んなっ!?パーカー貸してやってんのにその言い草はなんだよ!!つーかホントにスケベならパーカーなんて貸さねーよ!!たくっ…こっちは身体冷えて寒い思いしてるっつーのに…」
「うっ…!!」
晴矢の言い分にあたしはたじいろいた。

―って、あれ?

なんで晴矢も濡れてんだろ?

雨が降り始めたのはあたしが飛び出してから結構たってからだった。
なのになんで晴矢は傘を持たずにこんなにビショ濡れなんだろ?
まさか―すぐにあたしを探しにきた?

「…何笑ってんだよ」
「なんでもない!!…晴矢…」
「…んだよ」
「ありがと。そして…さっきはごめんね」
「!…俺も悪かったよ」

ピ…チャン…

「あ…」
「…雨、上がったな」

空を見上げると雲一人ない青空が広がっていた。

―こんなこと言うとどこぞの詩人かって思われるかもだけど…やっぱり今日の空はあたしの心とリンクしてるみたい―



おまけ
「「ゲホッ!!ゲホッ!!」」
当然と言えば当然なんだけどあの後あたし達は揃って風邪を引いた。
「二人して一緒に風邪引くなんて仲良いね〜」
「うっせーぞ/うっさいわよヒロト!!」

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