ヒロ玲


「風呂空いたぞ」
「あ、はーい…って、玲名…」

玲名が風呂から上がり、居間に行くとそこにはソファーで寛ぎながらテレビを見ているヒロトしか居なかった。
そのヒロトはというと玲名の姿を見ると微妙な顔をした。

「なんだその顔は。それより皆は?まだなのか?」
「あ、うん。まだ皆バイト。ほら、夏休みは稼ぎ時だからさ」
「そうか」

玲名は冷蔵庫からお茶を取り出すとヒロトの隣に腰掛けた。
ヒロトはそんな玲名に躊躇いながらも声をかけた。

「あのー…玲名さん?」
「?、なんだ?」
「…その格好は…何?」
「何って…別に普通だろ?」

玲名の格好は風呂上がりで暑いのか上はキャミソール、下は短パンというラフな格好だった。
確かに隣に居るのが同性なら構わないだろう。
しかし隣に居るのは異性であり、恋人のヒロトなのだ。

「まぁ、こういう事に無頓着なのは玲名らしいって言えば玲名らしいけどさぁ…」
「?」

ヒロトは困ったように笑いながら着ていたパーカーを脱ぐと玲名に羽織らせた。

「なんで着せるんだ、暑いだ…」
「あんまり無防備だと、襲っちゃうよ?」
「は……」

顔を上げてヒロトを見ると、ヒロトはいつものように不適な笑みを浮かべていた。
緑川辺りはこの表情を見ても胡散臭いとしか言わないだろう。
しかし玲名には分かる。
この表情の時は――

「ただいまー!」
「あ、誰かが帰ってきた」

ヒロトは玲名から体を離すと扉の方へ歩いていった。
しかしそこで一旦玲名の方を振り返るとにこりと笑いかけた。

「気を付けてね」
「―――、」

そう言うとヒロトは玄関の方へ歩いていった。


『襲っちゃうよ?』

あの目は―――本気の目だ。

これからは、風呂上がりの格好には気をつけようと固く心に誓った玲名だった。


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