くささと
「りゅうちゃん!」
「あれ、あの子…」
「!、さとちゃん…」
サウジアラビア戦も終わりスタジアムを出ようとすると女の子が1人外で待っていた。
「ねぇ君、さっきの子だよね?一体どうし……って、うわっ!」
天馬が話していると急に葵にグイッと腕を引っ張られた。
「何すんだよ葵!」
「もうっ、空気読みなさいよね!九坂くん、私達先に行ってるね!」
「え、ちょ、葵!?」
葵はにっこり微笑むと戸惑う天馬を無理矢理引き摺りチームの皆を連れていった。
残されたのは九坂達だけだった。
二人の間に気まずい沈黙が流れた。
「「……あの!」」
「あ……何?」
「りゅうちゃんこそ…」
「えー…と、その、さ、」
九坂は頭を掻くと里子を真っ直ぐ見た。
「俺…さ、強くなんなきゃ皆離れていくって思ってた。だから色んな奴と喧嘩ばっかしてた」
「………」
「けど違ったんだな。強いっていうのは喧嘩の強さじゃなかったんだな」
「りゅうちゃん…」
「俺…まだ本当の強さってよくわからないけどアイツらとならわかる気がするんだ。だからもう少しサッカー、頑張ってみるよ」
「…うん」
「だからまたさとちゃんに応援に来てもらえたらなー…って、ダメかな?」
「そんな事ない!」
九坂が頬掻いて少し照れくさげに聞くと里子は身を乗り出した。
「私、これからもりゅうちゃんの応援する。だから…頑張ってね!」
「!…ありがとう」
二人はやっと数年ぶりに笑い合う事が出来た。
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