前編






なんとか仕事は終わった。終わったが、時刻は既に夜の11時で

私の自宅までは二時間かかる。さらにもう終電は無い。つまり会社に泊まり込みが確定だ

なんかもう、明日は仕事だし皆は幸せでうふふあははしてるし、
なんかもう

な ん か も う さ!!!!!



「ねぇ伊藤……飲みに行くわよ、今から」

「はぁっ!?今から?明日も仕事だろーが」

「あたしが行くっつったら行くのよ。明日はあんたに付き合ってあげるんだからいーでしょ?」

「いや俺は今日はちょっと瞑想して精神を整えたいっつーか……てかなんでそんなに目据わってんだよ!こえーよ!」

「じゃあ明日は行かない。オツカレサマー、一人で飲みに行くから良いわよ」

「なっ、おいちょっと待てよ!」


慌ててバタバタと身支度を整える奴を置いて、さっさとデスクを出る






ロビーで警備員に帰宅を告げていると、ようやく追いついた伊藤に手を握られた
ぜぇぜぇしてる彼を見てると、奴から言い出したけど仕事付き合わせた上にこの仕打ちは無かったかな、と少し反省した

いやでも伊藤が無理言わなければもっと早く帰れたのよ!


「おま、足はえーよ!!」

「あら、家に帰る伊藤には関係無いでしょ。瞑想だか黙想だか知らないけど頑張ってね?」

「付き合うよ…俺車だから飲めないけど、ちゃんと付き合うから、明日は佐々が付き合えよ?」

「ありがとー、伊藤やっさしー」


そのまま手を引かれて駐車場に連れて行かれて、二人で小さな居酒屋に行った
そこまでは、はっきりしてるんだ







『なんなのよ!彼氏がいないとクリスマスは楽しめないの!?もうふざけないでよっ!!』

『あー、佐々落ち着け。気持ちはわかったから落ち着け。』


『あんただって入社するまでは彼女いたんでしょ!楽しんだでしょうね、毎年っ!!』


『おーいささー』


『ふぇ……いとー、寂しいよぉ』


『え、ちょっ、まっ、胸!胸あたってるから!』


『いとー…いとー』


『佐々!優香!落ち着け!!良い匂いだけど、とりあえず離れろっ』


『やだー、いとー……』












「この状況はナンナノカシラ」

「あー、お前もう最悪…酔うとあんなべったべたになるなんて反則だろ」



私、全裸
伊藤、全裸
そして見知らぬ部屋
ちょっと小さいベッドで伊藤に抱き込まれるように転がっていて

腰が痛い
ついでに足の間が、な、なんだか濡れてる


もしや酔った勢いでロストしちゃった!?ロストヴァージン!?

涙目になりながらあわあわしてると、額にキスをされてちょっと待ってろと伊藤はベッドから出てった

ちらっと見えた、やつの下半身が脳裏に焼き付く
そして、伊藤が抜けたせいで、ちょっと寒い……


もぞもぞと布団で身体を起こすと、少しちらかった小さな部屋に私の服や多分伊藤の服がちらかっていた

ぴらっと布団をめくると、シーツは血がついていた


ああ、やっぱりやっちゃったんだ……


酔っぱらった勢いで初めてを失うなんて

ひたすら凹んでうつむいていると、急に目の前にきらきらの指輪を差し出された


「あー、こんなことしてから言う予定じゃ無かったんだけど……好きだ。結婚してほしい。または結婚前提で付き合ってほしい」


「え……」

真っ赤な伊藤に釣られて私まで全身が熱く、赤くなるのを感じた

え、え、えぇっ!?












クリスマスイブの日、
いい子なんかじゃないけれど
サンタさんは私にも凄く素敵なプレゼントをくれました









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