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 Dezel



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背が高いのが羨ましいなぁ、と思いながら隣を歩く。目の前に落ちる影はひとつ。僕の影だけだ。隣で、長い足が悠々と街を闊歩していく。僕は置いていかれないように少し早足で。
俗に言う「親子つなぎ」をした手のせいで、緊張してばかり。きっとそんなこと知りもしないんだろう。手袋とグローブ、その二枚の厚みがなんだかもどかしい。
こうして繋いだこの手が、いつか離れてしまう気がして、そっとデゼルの顔を見上げた。きっと僕が顔を見たことを知っていて、何食わぬ表情で歩き続けている。天族だって寿命は永遠ではない。けれど、傍に、隣にいてほしいと思うのは我儘だろうか。その問いの答えは、返ってこなかった。


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冬がまもなく訪れるような、しんとした寒さが街を包んでいた。城壁の上、北を見るように腰掛けたおなまえは、南風を背中に感じながら、未だ活気ある街の光をぼんやりと見ていた。今宵は、どこか特別な夜であるような感じがして。
それぞれがいつも通り、されどどこか緊張した面持ちで、そして決意を秘めて、語り合っている。彼の後ろ髪を揺らしていた南風が、不意に周囲で渦巻いた気がして、はっとする。憑魔などではなく、その風はどこかぬくもりをはらんでいるような、不思議な風。包み込まれるような気配を感じ、ふと思い立つ。そしておなまえは独り言のように、風に話しかけた。

「鶴は、届きましたか」

刹那、鐘の音を遠くに届けるかのように、一陣の風が吹き荒れた。


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デゼル、と呼びかけてくる声。同時に、鮮明とはいえない視野に白い物が映りこんだ。

「僕が、あなたの全てを引き受けます」

唐突にそう述べて、腹部に彼の手が添えられた。一瞬鋭く刺さるような痛みが走ったが、僅かな間をおいて疼くような痛みに変わる。左手から力が抜けたのを見逃さずジークフリートを奪い取ったおなまえは、こつ、と自分のこめかみに銃口を当てた。

「あなたは、生きてください。生きるべきです、本心のまま」

スレイ達の反論の言葉は、豪風にかき消される。その風の向こうで、おなまえはこれまで見たことがないほどに綺麗に笑んで、トリガーを引いた。


すべてが一瞬で片付いた。石畳に戦いの痕が残っていること、おなまえがいないこと。それさえ除けば、1時間前と同じ状態に戻っていた。
見上げた空に、星はない。


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