「何で俺の事信じてくれたんだよ」

『ん〜、なんとなく?』

「えっ、理由ねぇの?」


池澤とはクラスが一緒だ。
でも話したこともあんまねぇし、よく知らなかったんだけど、俺はひとつだけ分かった事がある。

コイツはめちゃくちゃ変だ。

そもそも俺に声掛けた時点で変か
しかも信じてくれんのは嬉しいけどさ、理由がなんとなくって…
嬉しいけどさ。


『てゆーか、切原何もやってないでしょ?塚原に』

「!!」

『あの子 切原が好き好き言ってたから、多分告白したのはあんたじゃなくて塚原。
あの子もつまんないプライドあるから振られて腹立ったんでしょホント馬鹿』

「すげーな、お前」


池澤の言った通りだ
一週間前、塚原にコクられたけど振った。

何でって、タイプじゃねぇし?


で、次の日学校に来てみりゃ変な噂が流れてるし、先輩達からいきなり暴力振られるようになるし、クラスの奴らも俺を軽蔑の目で見てくる。



俺が塚原を振ったはずなのに、噂によると塚原が俺を振り、その腹いせに俺は塚原に襲い掛かったらしい


ここまで来るとすげーな。
一日でまったく違う噂が学校中に流れんだから。

他の学年に流れたのは多分丸井先輩達のせいだ。
塚原はマネだから、朝練の時に先輩達に言ったんだろ


でも、俺、先輩達は俺の事信じてくれるって思ってたよ
それだけ、ショックだった



『よし、終わったよ』

「さんきゅ。それよりお前どうすんだよ、塚原たちと同じグループなのにいいのか?俺と一緒にいて」


『うん、私あの人達嫌いだから。昨日まで切原格好いいだのなんだの言ってたのにさ、こんな簡単に手の平返すなんて、と思ってね。嫌いになっちゃった。』

「お前、すげぇよホント」


嫌いになっちゃったって、んな簡単に


『塚原に“ルイちゃんが味方だと嬉しいな”って言われたんだよ。
もうあの子の中では切原は敵なんだって思ったらさ、馬鹿馬鹿しくなった。
あんた切原が好きって言ってたじゃん、ってね。』

「信じてくれてありがとな」

『いえいえ、私授業サボるつもりだけど切原どうする?』

「あ〜、」


時計を見るともう昼休みは終わっていた
五時間目はもう始まっている

五時間目は英語か…




「俺もサボるわ」

『お、丁度いいや。屋上行こうよ。
保健室の冷凍庫にさ、アイス入ってんだ。丁度あと二個。
先生にばれちゃって今日中に片付けないといけないんだよね』

「なんでアイスなんか学校に持ってきてんだよ。つ−か何で保健室?」

『あたし保健委員だし夏といえばアイスでしょ?』

「家で食えよ」

『学校でも食べたいもん。
それよりアイスいるの、いらないの?』

「いる」

『よし。じゃ、行こう』



冷凍庫からアイスが入っているであろう袋を取り出した池澤。
そして笑ってドアのほうに向かって歩いて行った


やっぱ、コイツ変だ。







《だけど、笑った顔が可愛いとか思ったのは秘密だ》



秘密

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