目を閉じれば浮かぶ未来



『お兄ちゃん』

「何だ?」

『私好きな人出来た!!』

「うわぁああああああ!!!!!」


兄さんは耳を塞ぎ、走って何処かへ消えた。当の名前はというと、何故兄が消えたのか分かっていないようで首をかしげている。


『春ちゃん、私お兄ちゃんに何かしちゃったかなぁ?』

「大丈夫よ、多分。」


心配そうに私を見上げる名前は、お兄ちゃんからだけじゃなく、私から見ても可愛い。
そんな名前を溺愛している兄さんは、24歳になっても全く変わらないようだ。
名前はもう中学生なのに。

おどおどしている名前をマネの仕事に帰し、兄さんを探しに私は学校を歩き回る。
円堂監督もやれやれという顔で笑っている。

廊下を歩いているとどこからともなくすすり泣く声。ため息をついてその方向へと行くと、案の定泣いていたのは兄さんだった。


「兄さん」

「春奈か…」

「兄さん、名前だってもう中学生なのよ?恋だってするわよ。いつか結婚だってするじゃないの。」

「だが…!!」

「私だっていつかは結婚するつもりよ?」

「あぁぁぁぁぁああああぁあああ」



体育座りで耳をまたもや塞ぐ兄さん。
そのうめき声をやめて頂きたい。


「私達の妹よ?いい人選ぶに決まってるじゃない。兄さんは天才ゲームメーカーよ?」

「…そうだな!!」


どうやら機嫌が直ったようだ。
立ち上がっていつものドヤ顔を見せつつ歩き出した兄さんの後をついて行く。

グラウンドに着くと、部員達にドリンクやタオルを渡す名前。
こっちに気付いて名前が私達に手を大きく振る。


『お兄ちゃーーん、春ちゃーーん!!!こっち来てーー!!!』


どうやら私達を呼んでいるようだ。兄さんと顔を合わせ、名前の所へ行くと、満面の笑みで待っていた。


『お兄ちゃん、春ちゃん。私が好きなのは剣城君だよ!!』

「お、おま馬鹿っ!!んな大声で言ってんじゃねぇよ!!!」

「…つ、付き合ってるのか?」

『うん』

「両思いなのね。おめでとう名前、剣城君。」

『うん!!』

「だ、だめだ…」

「え、何兄さん」

「コイツは駄目だ!!!見るからに不良じゃないか!!こんな変な頭した奴と名前が付き合うだなんてゆるさん!!断じて許さんぞ!!!
せめて神童にしとけ!!あいつムッツリスケベっぽいが剣城はやめろ!!!」

『お兄ちゃんそれ以上剣城君の事悪く言ったら許さないからね。』

「そうよ兄さん。名前が可愛そうじゃないの。私も嫌いになるわよ兄さんの事。」

「うわあああああああああ!!!」



本日三度目。兄さんはまた何処かへ走り去ってしまった。
今度は探しにいかなくていいだろう。
今は目の前のニコニコ笑っている名前と照れたように笑う剣城君の幸せを願おうと思う。






目を閉じれば浮かぶ未来


《俺鬼道監督に大分嫌われてるな》
《ごめんね。大好きだよ剣城君》
《…俺も。鬼道監督に認められるように頑張るよ》
《誰がお前なんぞ認めるか!!お兄さんだなんて呼ばせないからな!!》
《《お兄ちゃん!!/兄さん!!》》
《うわあぁああぁぁあぁ!!!!》




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リクエスト下さった陽帆様ありがとうございます!!

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