疑問を解きに行こう


『最近宍戸さんの様子が変じゃない?』


ずっと疑問に思ってたんだけど、と如月は言った。
鳳も俺も樺地も、あからさまに跡部さん達を避けている宍戸先輩をおかしいと思っていた。


「もしかしたら宍戸さんは気付いたんじゃないかな…」

『でも、どうやって?』


あれだけ怒ってたんだから真実に気付くだけの出来事があったはずだ。



「直接話を聞くのが一番早いよ。今日にでも聞こう。」


鳳の提案に全員が頷いた時、携帯が鳴った。宍戸さんからメールだった。
内容は、部活が終わったら部室に残っていて欲しいという内容だった。
俺だけじゃなく、如月や鳳、樺地の携帯にも同様のメールが入ったらしく目を合わせて頷いた。















「悪ぃな、急に」

「いえ、俺たちも宍戸さんと話そうと思っていましたから」

「そうか…」


いつも宍戸さんにある覇気が今日はない。
俯いていて表情も伺えない。
あえて如月も呼んだから、多分如月の事だろうな。



「志帆……すまなかった」

『え…?』


黙っていた宍戸さんが如月に近づき頭を下げる。
如月は唖然としている。


やっぱりな…
宍戸さんは気づいてたんだ、真実に。


「この間、お前と紗江が話てんの聞いちまったんだ。たまたま部室の近くを通ったときにさ。
そしたら紗江がいじめられてる気分はどうか、とか、もっといじめてもらおうとか言ってんの聞こえて…」

『だからあの時宍戸さんはいなかったんですね』

「本当にすまなかった」


少し何かを考える如月。
宍戸さんを許すかどうかは如月が決める事だ。
俺達は何も言わない。


『宍戸さん、信じてくれてありがとうございました』

「え…お前…」

『はい?』

「許すのか、俺の事」

『はい』

「何でだよ!!俺、お前の事殴ったんだぞ!?酷いこともたくさん言っちまったし」

『いいんです。それに、殴られた位で皆さんの事嫌いになるわけないじゃないですか。
だからもう良いんです。ただし、条件を一つつけても良いですか?』

「条件?」

『はい。あ、でもそんなにキツイ条件じゃないですよ!?
えっと…宍戸さんには傍観者で居てほしいんです』

「傍観者…?」

『はい。私達は後輩として先輩方に宣戦布告をしました
だから、後輩だけで決着をつけたいんです。
我が儘言ってごめんなさい。』

「志帆らしいな…
傍観者でも俺はお前達の味方だ。本当にすまなかった。
若、志帆を頼んだぜ!!長太郎、明日からダブルス再開だなっ!!」

「はいっ!!よろしくお願いします宍戸さん!!」

「おぅ!!じゃあな!!」



いつもの宍戸さんに戻ったらしい。それに如月も安心したようだ。
鳳も、よかったな。元にもどって。

早く、他の先輩も戻さなきゃな。


俺は嬉しそうに笑っている如月の頭をぐりぐり撫でた。


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