ドロドロの殺意
“夏美っ!!!!”
夏美が家に帰ってこなかったその日の夜、私は嫌な予感がして眠れなかった。
朝方、夏美の泣き声が聞こえたような気がして私は土砂降りの雨の中走り出した。
あの、付き合い始めた和博という彼の元にいるのだろうか…。
それならば良いが、どうしてもそうではないような気がしてならないのは、あまりにも過保護だろうか。
走って走って走って、私は公園の目の大きな道路で泣き叫ぶ夏美を見つけた。
(あぁ…やっぱり泣いていた…)
私は名前を呼んで夏美に駆け寄った。
私に気付いて夏美は真っ赤な目を見開いて抱きついてきた。
何があったのか、すぐにわかった。
あの男になにかされたんだ…。
私は夏美を強く抱きしめてから、帰ろう。そう言って夏美を背負った。
夏美はずっと私の背中にしがみついていた。
*********
家に帰ると、私が出て行った音に気付いて起きた妹達が心配そうに私と夏美を見た。大丈夫、とそれだけ言って夏美の部屋に私は向かった。
夏美は薄手のワンピースしか来ていなかった。
“夏美、下着は…?”
ビクリと体を震わせた後、夏美はうずくまって泣いた。
もうこれ以上は聞けない。
しかし大体の目星はついた。
和博以外の男に触られたんだ。
もうすでに和博と夏美が体を重ねている事は知っていた。
でもとても幸せそうにしているのを見て何の心配もなかった(流石に年齢的にどうかとは思ったが…)
だから許していたのに、夏美との交際を賛成したのに。
夏美が幸せならそれで、それだけでいいと思ったのに…っ
“夏美、風呂に入っておいで”
夏美は小さく頷いた。
夏美下着と、着替えを持って私も後ろを追った。
私は父との約束を破ってしまったのだろうか。
妹を守れなかった私は、四姉妹の長女としての役目を果たせているのだろうか。
そんな事を考えながらも私の中には殺意がドロドロと沸いて来る。
“春樹ちゃん…”
“秋音、冬香…どうしたんだ?”
“夏美ちゃん、どうしたの?何で春樹ちゃん泣いてるの?”
“何でもない…”
事の目星はついている。あの男…和博が関係している事。
そしてあの子はおそらく強姦されてしまった…そんな風な考えに至った。
風呂場からはシャワーの音が聞こえていた。
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