何故トップバッターが俺なのか。



「お、おはよう名字さん!!」

『あ、おはよう鳳。あれ、転んだの?』

「うん!!でも俺泣かなかったよ!!」

『はい、いい子いい子。』



俺はなんて不思議な光景を見ているのだろう。大男が小柄な女子に頭を撫でられている。

その差、二十センチ弱。もう一度言う。不思議な光景だ。

ニコニコ笑う鳳と、呆れたように頭を撫でる名字。もうそれはすでに友達という構図ではなく、母と子のようだ。


確かに鳳の膝はすりむいて血が滲んでいた。
それを手当てする名字。

これは朝練での出来事だ。


そして更に言うと、この鳳長太郎という男は泣き虫だ。すぐ泣く。本当にすぐ泣く。
コートでボールふんずけてケツ打っただけでビービー泣く。

それをあやすのが名字の役割。
ちなみに名字はテニス部のマネージャーだ。


しかもその事実をしっているのはテニス部の部員のみ。俺達は泣き虫がテニス部にいるという事実を今までがんばって隠し通してきた。

テニス部の名誉のために!!!



『はい、終わったよ』

「ありがとう名字さん!!」


どうやら治療は終わったらしい。


「あ、日吉ーーー!!俺泣かなかったよーーー!!!」




何大声で言ってんだ!!
こっちにくるなああああああ!!


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