『この日』の理由



7:15

「お疲れ様でしたー」

ロッカーから鞄を取りだし、足早にレストランを出た。
これでバイトは終わり、フリーだ…!
マフラーに顔を埋めてにこりと笑った。

スマホを開いて、着信履歴の一番上をタップすれば、彼の元に電波が伝わる。
それだけで嬉しくなったおれは、コールが彼の声に変わるのがとても長く感じられた。

『…エレンか』

「あっ、もしもし!エレンです!」

雪の舞う寒い中、顔が急に熱くなるのを感じる。
いったいどこまで惚れれば気がすむと言うのだろう。
それでも、実際じゃ絶対にあり得ないほど近くで聞こえる色っぽいその声に、また熱くなってしまうのだった。

「あぁっあの、明日、一緒にご飯、行きませんか、っ!」

『明日?…明日と言わず今日でもいいが』

「いやっ、おれ今日は!ってか明日じゃないと!あ、そうじゃなくて明日がいいんです!!……ダメ…ですか、?」

『別にかまわんが…何だ、それだけか』

「あぁあと!あと、…えーっと…」

『何だ』

「い…いえ、おやすみなさいって…言いたかっただけです」

『あぁ、おやすみ』

プチ、と音を立てて切れた画面を眺めてため息を吐く。
画面に落ちた雪は、白い息と一緒に空気に溶けていった。

さぁ…帰らないと。
帰って、あれ、作らなきゃ。
それで、ちゃんと早く寝て、明日にそなえよう。
『明日』…この日、想いを伝えようと思う。
ずっと隠してきたこの想いを、彼に、…リヴァイさんに。

玄関のカギを掛けて、部屋着に着替える。
帰路の途中で買った材料をキッチンに置き、準備に取りかかった。

********************

「で…出来た!名付けて…『心もとろける愛の生チョコバレンタイン』!!…よし。」

綺麗にカットされたチョコを冷蔵庫に入れて、にんまりと笑う。
もう11:30をきっていた。

「…で。あ…ぁあっ、?!ご飯食べるの忘れてた!」

ばっちりチョコを仕上げた後、疲れがどっと出てしまったエレンは、
仕方なくお湯を沸かしてインスタントラーメンをすするのだった。


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