ベッドに押し倒しながらキス 


おれには恋人がいる。
その人とはよく飯に行ったり、飲みに行ったりもする。
おれはそんな生活で十分満足していた。
けど、その人の方はかなり限界だったようで。

「こんばんはー」

今日はお泊まりの日。
毎週土曜日は、リヴァイさん家に一晩だけ泊まりに行く。
リヴァイさんがうちに来い、って言ってくれてからずっとこんな習慣は続いていた。
けど、恋人との一晩だからといって何の変化も進展も無く。それがリヴァイさんのストレスだったようだ。

「適当に座っとけ」

「はーい」

紅茶を淹れに行くリヴァイさんを見届け、パチッとテレビをつけた。
バラエティ番組だろうか、誰かが喋ると他の人はわはは、と笑う。
何が面白いんだろう、とじっくり見ているとリヴァイさんがやってきた。
コトン、とテーブルにカップを置く。

「ありがとうございます」

「あぁ」

二人並んでテレビを見る。ふと気がつくと、リヴァイさんの腕がおれの肩に回っていた。

「あ、あのリヴァイさん…?」

「何だ」

「ど、どうして…」

おどおどしてしまったのも仕方ないことで、おれはこんなことされるのが初めてだった。
いつもの泊まりはこんなことしないのに、どうして?とそんな疑問ばかりが頭を駆け巡る。

「お前は俺の恋人だろ、エレンよ」

ドクン、と鼓動が波打つ。こんな至近距離でさらりと言われた言葉に血の巡りが活発になった。
恥ずかしくて一生懸命バラエティ番組を見るが、それも目をそらしたくなるようなキス特集だった。
同じくテレビを見ていたリヴァイさんが口を開く。

「恋人同士ならこんくらいして普通じゃねぇか?」

「こんくらいって…どんくらいですか?…き、キス、ってことですか?」

ふと目が合ったと思った瞬間、頭をぐいっと捕まえられた。
キス…されていた。
テレビから相変わらず笑い声が聞こえる。
んっ、と声を漏らすとリヴァイさんは頭の拘束を解いた。

「下手くそだな」

「なっ?!そんな、いきなりしといて酷いですよっ!!」

「じゃあやり直しだ」

「えっ」

「するぞ。目を閉じろ」

目を閉じるとちゅ、とリップ音を立てて優しくキスをされた。
再び顔が赤くなっていくような気がする。
目を開ければいつも通りのリヴァイさんがいる。
何だか自分だけ突っ走っているような気がして、ぐいぐいと紅茶をあおった。

「どうせ今しかねぇなら…」

「え?何か言いました?って、うわあぁっ、!!!」

「エレン、ベッドだ」

いきなりふわりと抱き上げられる。俗に言う、お姫様だっこ状態。
ベッドだ、と言われてもどうしようもない。
寝室のドアをばたんと開けると、リヴァイさんはおれをベッドに投げた。

「り、リヴァイさん!や、待って!ちょっと待って下さい!!」

「うるせぇな…何だ」

今すぐにでも喰わんとしているリヴァイさん。
今の状況が把握出来ていないおれにだって、これから何が始まろうとしているかなんて容易く分かった。

「その…おれ、こうゆうの…はじめてで…」

「大丈夫だ…やさしくする」

ドクンドクンと心臓が跳ねている。
肩に手を添えられ、ゆっくりと押し倒されながらさっきよりも濃厚なキスを迎え入れる。

「ふぁ、んっ…ぁ」

「やさしくする…エレン」

「リヴァイ、さん…っ」

「お前の初めてが…欲しい」

恥ずかしくって、抱いて下さいなんて言えなかった。
だから、ただ必死にリヴァイさんを抱きしめた。伝わって、と願いを込めて。

「好きだ…エレン」

「リヴァイさん…っ、リヴァイ、さんっ」

ただ必死に名前を呼んだ。愛してるって想いを込めて。



fin.



初めてのキス。



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