土曜日の練習を終えて昇降口を出ると、赤い傘を持った幼なじみがきょろきょろ辺りを見回しながら立っていた。
「……美月?」
「勇人!」
呼びかけるとぱっとこっちを見て、ほっとしたのか笑顔になって駆け寄ってくる。
「え、なんでいるの?」
「頼まれたの、勇人が傘持っていってないから持ってってあげてーって」
「ああ……姉ちゃんが」
「うん。おつかれ」
「さんきゅー」
差し出された紺の傘を受け取ると、美月は俺の後ろを覗いた。阿部が気付いて、美月も手を振っている。
「……みんなでどこか行くの?」
「ああ、あいつんちで勉強するんだ」
と、三橋を指差して言うと、「うわー、えらー、がんばれ」と、ちょっと険しい表情をして美月が二歩ほど後ずさった。
「なんで引くかな、そこで」
「おおきい傘持ってきてよかったね、阿部くんとかいれてあげなよー」
言いながら美月はどんどん離れてゆく。
「あ、うん、帰んの?」
「うん、じゃあねー、お邪魔しました」
手をひらひらと振って、そのまま美月は俺に背を向けて歩き出した。
その背中を見つめていると、水谷が絡みついてくる。
「栄口栄口っ、あれだれ?」
「え、幼なじみ、高校違うんだけど」
「いいの? おまえ出てくんのずっと待ってたんじゃねェの? 羽丘」
受け取った傘の柄はあたたかくて、俺は何故だか、身体の中まであたたかくなっていくのを感じた。




雨の日のお迎え


雨の日のお迎え(栄口勇人)
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