さっきから可笑しそうに肩を震わせて笑う阿部を、怒りたいのに怒れない。
この状況じゃなにを言ったって無駄だ。阿部の腕の中でわたしは確かに緊張している。
身体なんてかちこちだし、心臓はものすごい速さで動いている。それが阿部に伝わっているのだ。
悔しくなって、わたしは阿部の胸に耳を寄せた。
わたしの肩に顔を埋めていた阿部が、すこし顔を上げた。
ああなんだ。見つけた鼓動は、わたしとおなじくらいの速さで、わたしは何故だか泣きそうになった。
鼓動は思うより正直で
鼓動は思うより正直で(阿部隆也)
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