∴ 使徒の日記念文






そうやって胸の奥にできた傷。

すぐに僕のものになる体って分かってて、思い切り引き剥いだ。
いわば「自分自身」に注いだ愛。きっと心地良いものだろうと。
だけど傷は塞がったのに、痛みが治まらない。

本当は理由なんか考えたくない。
なのに風に混じるその歌が、至極単純な答えを僕に教える。

君はもういない。


今すぐ座り込みたいのに、背骨は何かに繋がれぶら下がったまま。
見上げる空には消えた跡すら無い。

苦しめること、痛めつけること。
嘲笑、罵倒、裏切、ぜんぶ愛。

ねぇそうでしょう?僕はそう信じてきた。
だけどなぜ君はもう笑ってくれないの?

明日目が覚めなければいい。
誰かに向かって祈りながら、それでも呼吸がやめられない。
先にも進めず後にも退けず、ただ立ちつくす。
胸に咲く血まみれの花が散らばって、また芽吹いてく。

陽が昇る。雲が動き出す。

優しい光に照らされ、水色に染まっていく海。
でも手に掬ればきっと死ぬほど冷たいんだ。

青黒い風を招いて窓が閉じる。
空っぽの部屋。静止したカーテン。

この夜は明けない。





*オワリ*





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幻想的な雰囲気のヨハヨハ、大変ご馳走さまです…///
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この度は素敵な作品、ありがとうございました!


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