***
 
 ピンポーン

「はーい、ってあらタイキくんにユウくん。こんにちわ」
「こんにちわおばさん」
「学校のプリントを届けに来ました」
「わざわざありがとうね」
「あの、タギル…くんの体調はどうですか?」

 恐る恐る聞いてみるが、タギルの母親は心配しなくていいわと微笑む。

「熱も下がったしすぐ回復するわ。タギルも皆勤賞逃したって悔しんでたの」
「はは、タギルらしい」
「今年の風邪は頭痛と発熱みたいよ。タイキくんもユウくんも気をつけてね」
「「はい、ありがとうございます」」

 トントントン

「すみませんおばさん、台所はどこに…」
「「「………」」」

 階段を下りる音が聞こえてきたと思えば、土鍋とピッチャを乗せたお盆を持った灰色の髪をした少年が…

「でえええええっ!!??な、なんでリョウマが此処に!?」
「へ、な、わ、私はその…っ!」
「ふふ、リョウマ君も少し前からタギルのお見舞いに来てくれてたのよ
 良いわねぇ。ライバルで親友なんて…青春だわ」
「そ、そうですねぇ…はは、ははは…」



 ===間===



「スミマセン。タイキさんとユウまで留守番なんかさせて」
「そりゃタギルは一応病人だからね。おばさんが心配するのもわかるよ」
「俺たちは別に構わないよ。それで熱は下がったって?」
「はい。けどまだ頭痛とだるさが抜けなくて」

 あの後、タギルの母親は用事のため家を空けることになり、その間タイキたちが留守番を代理することになったのだ。
 マスクを着けカーディガンを羽織るタギルは相変わらずな母親の大胆っぷりにため息をひとつついていた

「タギル、水を持ってきたよ」
「おーサンキュなリョウマ」
「…で、なんでキミがここにいるわけ?何でタギルが風邪引いてるの知ってたワケ?」
「ボクがガムドラモンからきいたのー」

 ぴょんとひと跳ねしたのは頭に一角が生えたデジモン―ツノモンだ
 このツノモンはアスタモンのデータを受け継いだデジモンである。
 クォーツモンをハントした事により、アスタモンの本来のデータもデジタルワールドに帰還され、それをシャウトモンが保護したのだ
 その後データはデジタマへと変化・孵化をしプニモンが生まれ、ツノモンへと進化した。生まれたばかりのプニモンがリョウマに飛びつき、何度も彼の名前を呼ぶ姿は今でも彼らの記憶の中で鮮明に残っている

「カゼはいたいんでしょ?タギル、リョウマのともだち、だからまもらなきゃ!」
「ツノモンはリョウマと一緒にタギルを守ってくれたんだな、ありがとう」
「えへへー」

 嬉しそうに笑うツノモンをリョウマは抱きしめた
 ツノモンもぐりぐりと甘えるように頬をなすりつけている

(…良かったなリョウマ、本当に)

 心から祝福をしていた矢先、コンコンと窓ガラスを叩く音が聞こえる
 全員そちらへ視線を向けるとガムドラモンが立っていた

 ガラガラッ

「おかえりガムドラモン。目立ったことしてねぇだろうな?」
「あったりめーだろィ!タギルこそさっさと体調治せっての」
「それでどうでしたか?」
「んー、確かにデジモンの匂いはすっけど、なぁんか変なんだよなぁ」

 窓から入ってきたガムドラモンはタギルの横に座りだし、何やら報告をしていた。
 イマイチ現状を把握しきれないタイキとユウは互いに首を傾げる

「なにかあったのか?」
「実は奇妙な噂がありまして…、いまアイルとレンにも調査をしてもらっているんです」
「奇妙な噂?」
「呪いの桜、聞いたことありますか?」
「「呪いの桜?」」

 


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