「桜の神様、どうぞ の夢を養分にしてください」 「隣町に蕾すら出ていない桜があるのですが、その桜に呪いたい相手の名前を呟くと数日後その人物は無気力となり、部屋から出なくなるようです」 「人間のやる気を養分として吸い取ってるって話だぜ」 「この噂も1ヶ月程前から突如出て来た話です。おそらく…」 「あぁ、デジモンの仕業とみて間違いないだろう」 リョウマ、アイル、レンはこの噂の真相を探るために数日前から調査をしていた その途中でタギルの体調不良を聞き、調査の協力も兼ねて見舞いに来たという流れだ 2人から噂の内容を聞いたタイキは口元に手を添えながら何やら考え事をする 「枯れた桜を噂の媒介にしているのなら、その桜付近になにか手がかりはなかったのか?」 「私達もそう思い一番に調査しました。ですが、“デジモンの匂いがする”だけでそれ以上のことは…」 「オレっちもついさっき見に行ったけど、匂いだけだったぜィ」 「でもお前さっき変な感じだって言ってただろ?てかデジモンって匂いあるのか?」 「食いモンみたいな匂いじゃねぇやい。デジモン特有のがあるんだ 変な感じってのは…匂いが曖昧だったというか、違う何かと混じってたんだ」 タギルの膝の上に座っていたガムドラモンは云々と考え込みながら呟く 得られた情報はあまりにも少なく、タイキたちも頭を抱えてしまう 「アイルとレンはいま何をしているんだ?」 「隣町で被害に遭った子どもたちの周辺を調査しています。噂の発端を突き止めれば、何か分かるかもしれない」 「タイキさん、僕たちも一度その桜を調査しませんか?」 「そうだな…。ダメモンやシャウトモンの意見も聞きたい」 「オレも行きた「タギルは休め」…はい;」 リョウマの一言で大人しくなったのを見ると、どうやらタイキ達が来る前に一悶着あったようだ。 その証拠に普段はタギル同様突っ走るタイプのガムドラモンでさえ素直に聞こうぜと正していた 「元気じゃねぇタギルはタギルじゃねぇぞ!だから早く治して一緒に暴れようぜ!」 「そうだよなっ!オレだって調査してぇんだ!よぉーっし気合で治すぞおお!」 「それじゃ俺とユウは早速調査しに行く。詳しい場所を教えてくれないか?」 「分かりました。アイルとレンにも桜の場所で待機するよう連絡するので、合流後情報交換してください」 「了解。タギル、今日は大人しく寝てなよ。悪化したら余計大変なんだから」 「わかってらあ!」 鼻息荒くやる気満々の後輩の頭をを軽く撫でると、思いのほか柔らかい髪質の主はぽかんとした顔をしだす。 「へ?タイキさん?」 「早く良くなれよ」 「へへっ了解!」 「リョウマ、タギルのことは頼んだぞ」 「はい、任せて下さい」 「うわーたのもしー(棒読み)」 **** 隣町の駅に降り、地図を頼りに歩き出すタイキとユウ。 すでに桜は6分咲きで、もうすぐ見応えある満開の桜が咲くだろう 「…あのタイキさん?」 「なんだ?」 「移動中ずっと何か考え事してたみたいだけど、一体何を?」 「リョウマのことをちょっとな」 「?」 信号が赤になり歩みを止める。 不思議がるユウの視線を感じながら、タイキは疑問に思っていたことを1つ1つ述べだす 「タギルが心配なのも分かるが、おばさんも“すぐ良くなるだろう”と言うくらいタギルは順調に回復していた。にも関わらず付きっきりの看病をする姿勢を取っている」 「プニモンがタギルから離れないからなんじゃ…」 「もちろんそれもあるし、治りかけの身体で無茶しないよう見張る為でもあるだろう。けど、なんとなくそれだけじゃない気がするんだ」 「………」 差して気にしていなかったユウだが、言われると確かに変な感じだ。 そもそもデジモンの調査中なのにも関わらず、リョウマの中でタギルを最優先にしているのはどういうことだろう? (それだけタギルのことが………ハッ!いやいや何を考えているんだ僕はッ!) 「おっ!この公園じゃないか?」 駅から歩いて20分弱、地図に記された場所へと到着する。 公園は塀の代わりに木々が生えており、そのほとんどが六分咲きと満開間近になっている。中に入ると、放課後だというのに遊んでいる子どもはいなく寂しい空間だった 「やっと来たわね、こっちよ!」 「待ちくたびれたよ」 「それは悪かった。話はリョウマから聞いたよ、呪いの桜ってのは…」 「アレだよ」 公園の隅。滑り台の後ろにある一本の木 その木だけが他のと違い未だに枯れていた。 「先に言っとくよ。僕たちはお前たちに嘘をついた」 「どういうことだ?」 「呪いの桜を近くで見れば分かるわ。…正直、見てほしくないけど」 「近くで…?」 アイルとレンの曇った表情と言葉に不信感を抱きつつ、呪いの桜に近づいた。 その桜は他のと比べ傷だらけだった。風や鳥にやられたにしても1本だけというのは異常だ。 しかし、その謎も何故アイルたちが渋っていたのかも目の当たりにすることで理解できた 「な、んだ…コレは…」 ズザズザに刻み込まれたそれは刃物でつけられたもの。 ただ闇雲に刻まれたものではない。――名前が刻まれていたのだ 「ひどい…っ」 「嘘は噂の内容。正しくはこの呪いの桜に恨んでる奴の名前を掘り、真っ直ぐに切り刻むことでその人物は悪夢を見続けるようになる」 レンの言葉を聞きながらタイキは刻まれた名前を1つ1つ確認していく。そして… 「ッ!?」 「タイキさん、どうし…ッ!?」 「どうやら次の標的はタギルみたいだぜ」 Next Home |