「いいかお前ら、明日から春休みだがダラダラ過ごすんじゃないぞ
 受験生だと自覚して自分の将来についてよく考えろよ」
(将来、かぁ…)

 終業式の恒例行事とも言える担任からの有難いお言葉を聞きながら、タイキは自分の将来について考えだす。
 …が、チャイムの音と共に考え事はどこかへ飛んでしまった

「家から学校が近い、無難に入れそう、校舎が綺麗、憧れの先輩がいる、スポーツに力を入れている、など志望動機は人それぞれだと思う
 だが、高校受験は人生を決める第一歩だということを忘れるなよ」

 適当に自分の将来を決めるなという言葉を締めにホームルームは終了する。
 待ち望んでいた春休みに嬉しそうにガヤガヤとにぎわう教室。数ヶ月前にこの世界が滅びかけたとは思えないほどの平和っぷりだ

「ねね、春休みみんなでちょっと出掛けない?」
「いいね〜。あ!わたし桜みたい!そろそろいい感じに咲かないかな?」
「ニュースではあと4月初めが一番見頃って言ってたよね」
「それじゃ4月2日とかさ」

 女子の話声を聞き流しながらタイキは窓からの景色を眺めた
 クォーツモンをハントしたことによりデジクォーツは消滅したが、時たま不安定なデジタルゲートに巻き込まれ人間界にやってくるデジモンたちがいる。
 そんなはぐれデジモンをタギル達がハントし、デジタルワールドに返してる。シャウトモンはデジタルワールドの安定を保つのが忙しく中々人間界に来れないようだ

(無茶してなきゃいいけどな、アイツ)

 お互い様だ。なんてツッコミが想像できるのだから笑ってしまう


 ――――


「あ、タイキさんお疲れ様です!」
「おつかれなのーね〜」
「お疲れ様、あれタギルは?」

 いつも通り屋上に行けばすでにユウとダメモンがいるが、タギルがいないことに疑問を持つとユウも歯切れが悪そうになった

「実は…タギル、風邪引いたみたいなんです」
「え、風邪?」
「馬鹿は風邪を引かないはずなんですけどねー」
「はは…まぁ最近気温が不安定だったからな」

 フォローは入れるも実際タイキも内心馬鹿はryのフレーズを浮かべたのであまり説得力がない
 明日は槍が降るかもという定番の言葉はなんとか堪えたようだ

「それでこの後タギルの家に今日配布されたプリントを渡しに行きたいんですが…」
「(クスッ)見舞いに行きたいって素直に言えばいいだろ」
「は、はぁ!?なななに言ってるんですかタイキさんッ」
「ユウ、ドモりすぎなのーね」
「ダメモン!」
「ぷっ、くくく」

 ダメモンの指摘に余計顔を赤くなるのが面白くつい笑いだしてしまう
 恥ずかしさを通り越して拗ねられる前に話を進めなくてはとタイキは先手を打った

「はいはい。先生に頼まれて“仕方なく”だもんな?」
「そ、そーですよ!先生に直々に頼まれたから仕方なく行くんです」
「それじゃ早速行こうぜ、あっ何か見舞い品持ってった方がいいのか?」
「それならユウが大体決めてむぐもご」
「アイツに見舞い品なんていりませんよッ!すぐ行きましょうタイキさん!」

 ダメモンの口を塞ぎクロスローダーに強制送還し荷物をもって走り出す
 その一連の動作があまりにも俊敏で、タイキの腹筋が完全崩壊したのは言うまでもない。

 



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