2011/05/26 21:29 「……鉢屋、さん?」 苦しいよ。 〇〇〇 なんとなく。そう、なんとなく、ほって置いたら駄目だと思った。それが理由。ただのお節介。ああ。そう。お節介。らしくない?知ってるよ。仕方ないだろ。ほって置けなかったんだから。 「……でも、ほんと、兄さんらしくない」 「……自分でもそう思う」 〇〇〇 「……学年一根暗と言われる久々知が何でここにいるんだ」 「開口一番にそれは酷いと思う」 「だってそれしか知らないし。…んで、ここは何処だよ。私の部屋じゃないし、まさか、アンタの家?」 「まあ。そうなるかな」 「何で一体」 「目の前で倒れられて。俺、アンタの家知らないし、学校よりうちが近かったし」 「ほっとけばよかったじゃん」 「なんかそれは駄目な気がして」 「人としてってことか?」 「いや、なんとなくだけど」 「というと?」 「あー…、お節介、かな。自分でもらしくないと思うんだけど」 「うん。らしくない。何か裏あんの?」 「……そんなこと考えてもみなかった」 「……あっ、そ」 「……」 「……」 「ああ、そういえば」 「……何、この手」 「熱測ろうかと思って」 「そこに体温計あるけど」 「あ、本当だ」 「何?私熱あったわけ?」 「うん。さっきは7度5分。…うん、まだ熱いな。上がったんじゃない?」 「へー。…それにしてもアンタの手、氷みたい」 「冷え性なんだよ。それよりほら、体温計」 「…ん」 「……」 「……」 「…兄さーん?雑炊出来た…って、何してるの?」 「あ。伊助」 〇〇〇 ひんやりとした手が私の額から離れる。 名残惜しいと思ってしまったのは、きっとその手の感触が遠い記憶にあるそれと同じだったからだと思う。 「食べれる?」 「…あー、どうだろう」 ほかほかと湯気の立つお椀とレンゲを差し出され、私はそれを受け取る。 温かなそれは優しい香りがする。 |