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その人、こんなに想われて幸せだね
「で、六道くんはどんな人が好きなの?」
目の前で天使のように笑う人が好きだ、なんてとてもじゃないが言えない。
あれから桜はりんねの好きな人に興味を抱いたらしく、どんな人かとしきりに尋ねてくる。尋ねられるたびにりんねは複雑な気持ちになった。桜は親切心で聞いてくれていると頭ではわかっていても、胸が痛い。
「天使のように優しい人だ」
そうだ、真宮桜は天使のように優しい。貧乏なおれにも分け隔てなく優しくしてくれる。そんな万人に優しい彼女に自分は惹かれたのだ。時々その優しさや笑顔を自分だけに向けて欲しいと思えるくらいに、のめり込んでいた。自分の心を掴んで離してくれないのだ。
「そうなんだ。その人、そんなに想われて幸せだね」
だからそれはお前のことだ、とも言えず、りんねは桜を恨めしそうに見つめる。今だけは桜が小悪魔に見える。自分の心を振り回し、ふわふわと掴めない彼女は天使であり、小悪魔だった。
「いいなあ」
俯きそう呟く桜をりんねはまだ知らない。
150503
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