<目覚め>

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「ん、ぅ.......。きゃっ!ロー...」

目が覚めるとすぐ隣に寝ているローがいた。ローの上半身が裸だったため、思わず名前は自分の服を確認する。

昨日のナース服のままだった。ナースキャップとブーツは脱がされて、横に整えられていたが服が乱れた形跡は無い。

(ローが運んでくれたのかな...。)

寝る少し前からの記憶は無かったものの、何も無かったらしいことに安堵する。名前はローを起こさないようにそっと起き上がると、部屋の隅にあった買い物服から服を取り出し、静かに着替え始めた。
窓から見える空はまだ薄暗い。

その後、着替えて向かったのは食堂の横にある調理室。そこには皆の朝食を用意するコックの姿があった。

「おはよう、早いんだね!」

「私も手伝ってもいい?」

「ほんと?助かるよ。じゃあ、これやってくれるかな。」

コックと昨日の歓迎会の話をしながら、一つ一つ調理を進めていく。コックとの会話から分かったのは途中で寝てしまっていたことと、そしてそれに気付いたローが運んでくれたこと。その二つだった。

(いつも優しくしてもらってる...。)

最初はただの自分勝手な、俺様タイプの船長だと思っていた。だけどそれは名前の思い込みで、実はみんなに優しいことだからこそ、慕われていること...。
ローに関するたくさんのことに、ここ数日で気が付いた気がする。

(私も何かお返ししたいな...。)

今つけているピアスも、ローから貰った特別なプレゼントだ。名前は自分に何ができるのか一生懸命考えだした。





コックと一緒に作った料理をお皿にのせて、並べていく。その傍にパンがのせられている皿があるのだが、一つだけ何ものっていないお皿があった。

「あれ?これは...。」

「あぁ。船長のだよ。知らないのかい?船長はパンが嫌いだからさ。だから、おにぎりを作るんだよ。」

そう言いながら、コックは米を取り出している。

「...もしかして今から作るの?」

「うん、そうだよ。」

「お願い!それ、私にやらせて。」

慣れた手つきでおにぎりを作っていく。

「慣れてるね!」

「子供の時にね...。一通り教えてもらったから。」

ちらっと昔のことが思い出される。ネプチューン王のはからいで、王子や姫たちと一緒に教養を受けた日々。

(梅干しは嫌いなんだよね...。)

わざと梅干しを混ぜて、どんな反応をするか見たいとも思ったが今回はいつものお礼だ。梅干しを混ぜるのは、やめておいた。

「できたっ!」

ローは喜んでくれるだろうか?少し照れ臭いし自分が作ったことは、内緒にしておくべきか...。

「そろそろ皆も起きてくる頃だよ。手伝ってくれてありがとう!」

「ううん。でも大変だね...。これからは私が手伝ってもいい?」

「ええっ!それは構わないけど...。」

「じゃあ、決まり!」

みんなへのご飯を作る、それが名前の考えたお礼の仕方だ。コックの言う通り5分もしないうちに、船員たちが食堂へとやってきた。
ローももうすぐやってくるのだろうか。普段なかなか見ることのできないローの寝顔を思い出す。

(寝顔可愛かったな...。)

恥ずかしさのあまり、すぐに顔を背けてしまったことを少し後悔した。

「通路を塞ぐな、邪魔だ。」

そうそう。こんな風にキツイ口調じゃなくて、いつも優しかったらいいのに。

「って、ローっ!?」

「ん?なんだ、赤い顔して。熱でもあるのか?」

「ううん。ないよ、普通!平熱!」

うるさいと怪訝そうな顔をしつつ、ローはいつもの席へ座る。机には前もって用意された新聞と、コックと名前が一緒に作った朝食。
名前はいつ自分の作ったおにぎりを口にするのかとドキドキしながら、ローの横に座った。
平然を装って朝食に手をつける。その傍でローも料理を口に運んでいく。

「.........なんだ。俺の顔に何かついているのか?」

「え...っ?」

「見すぎだ、馬鹿...。」

食べにくい、とローは少し照れたように、名前の作ったおにぎりに手をのばした。

パク―――ッ

(あ、ローが食べた...。)

モグモグと口を動かしたまま、ローは何も喋らない。まずかったのか、と名前が不安に思い始めたその時、ローは名前のほうを向くと真面目な顔をして質問した。

「......お前が作ったのか?」






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