<お姫様抱っこ>

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「あー飲んだ、飲んだ!」

楽しい時間はすぐに過ぎていく。食べくずの乗った皿や、酒の空き瓶がテーブルに広がっていた。
中にはテーブルの上にべたっと顔をつけ、いびきをかく者まで出てきている。

「船長、まだ飲みますかー?」

「いや、もういい...。」

ふと、やった視線の先には床に座りベポにもたれるようにして、寝ている名前の姿だ。
周りには男ばかりなのに、それを気にもとめずに気持ちよさそうに寝ている。

「ちっ.......。」

今の自分の恰好を考えろ。

「無防備に寝やがって...。」

ガタッ――――。
椅子のズレる音がした。





「ね、船長!ってあれ...?さっきまでここにいたのに。」

「静かにしろ、ほら...。」

元気よくローに話を振るシャチを横でペンギンが静かに、と右手で人差し指を口の前に立てながら、左手でローのほうを指さす。
あぁ!とシャチは嬉しそうな顔をする。

「飲みすぎだ、馬鹿...。」

ふっと宙に浮く名前の身体。長い髪がふわりと名前の身体を追いかけるように、揺れた。
そしてそのままローは名前を抱いたまま、扉の向こうへと消えていった。

その一部始終を見ていたシャチとペンギンは頬杖をつき、目をうつろにしながら話をする。

「あー...船長、優しいな...。」

「俺も女欲しー...。」

「二人はもうヤッてると思うか?」

「なんだよ、ペンギン。あの船長だぜ?当たり前だろ。」

「そうかな?俺...まだだと思う。船長、名前ちゃんのこと、本当に大事にしてるっぽいしさ...。」

「なんで?」

「いや、帰ってきたあのあと...。」



「ペンギン。名前の着替えの用意を頼む。」

「はい!あの...何があったんスか?怪我してたみたいだし...。」

「俺の女に間違われて連れ去られた。抵抗したんだろうな。俺が行った頃には切られてた...。」


「その後、なんて言ったと思う?」

「面倒なことさせやがって、とか?」

「それが違うんだよ。」

ペンギンはシャチのほうへ身体をよせ、耳元でそっと話した。

「俺のせいだ...って。」





「気持ちよさそうに寝やがって...。」

船長室のベッドへと運ぶときもシーツの上に降ろしても、名前はピクリとも動かなかった。
スースーと寝息だけが部屋に響く。

そっと名前の髪に手を伸ばす。

「あいつもこんな風に...。」

長い髪が綺麗だった。親同士が勝手に将来を決めていたが、別に嫌いだったわけじゃない。あいつは賢い。女特有の面倒なところも無く、どちらかと言うと好きだった。
だが、敷かれたレールを進むだけの人生なんざ反吐が出る。力が欲しかった。

だから俺は――――。

「フフ.......。」

昔のことを思いだすなんて、俺らしくもない。だが、こいつを見ていると...。
あいつに似ているからか?それとも古文書に書かれた通り人魚ではないが、魅了されたか?

「名前、お前は何者だ...。」

普通の女なら男には抵抗しないはずだ。あの時、名前の傍に刀が落ちていた。下っ端の奴らの手には傷もあった。

男相手に戦った。
そういうことだろう?

「んっ、...。」

名前の身体がピクッと動いた。ローが顔を覗きこむと、目を強く瞑っている。

「んん....。」

(うなされているのか?)

名前が寝返りを打つ。その次の瞬間、ローは思いも寄らぬ言葉を聞くことになる。

「待って...シャンクス...。」

シャンクス―――?

「どういうことだ?」

ローはその名に聞き覚えがあった。海賊をしている者なら、知らない者はいないだろう。
新世界を統べる四皇の内の一人。赤髪のシャンクス。

「赤髪?まさかな......。」






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