<信頼>

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「あーさすが船長...かっこいい。」

「俺、惚れるかと思った。」

「うん、うん!」

軽く放心状態の名前を他所に、ペンギン、シャチ、ベポの3人はローのことで盛り上がる。
ペンギンとシャチに至っては、先ほどのことを再現するかのように頬に手を当てていた。

「やだ、ローったら...。」

「誰も見てねェよ。」

ん.....?

「名前。」

「ロー。」

どうやらペンギンがロー役、シャチが名前の役のようだ。
が、距離がやけに近い。見つめ合う二人。そして触れ合いそうな唇。

「...ちょっと!」

思わず名前が止めに入った。

「どした?名前ちゃん。」

「そんなのしてなかったよね?というか何よ、それ。」

「「え?さっきの続き。」」

ペンギンとシャチが声を揃えて、無表情のままそう言った。そこへ、ベポが笑顔で加わる。

「いつも二人こんな感じだもんね!」

それを聞いた名前は、びっくりしたように違うから!と声を荒あげた。

「またまた〜...。」

「そういう関係じゃないの?」

「......違う。」

ローの普段とは違う姿を見ていた3人はそういう関係だと思っていたようで、名前の否定に驚いていた。

「でも船長のこと好きでしょ?」

「へっ?」

「言わなくていいよ、分かるから。」

「勝手に決めないでよ、ねぇ!」

3人はむきになって怒る名前をよしよし、と子供を宥めるように宥める。
頭を撫でると頬を膨らませ、名前はそっぽを向いてしまった。
それを見たペンギンが軽く笑う。

「ようやくいつもの調子に戻ったな。」

ここ最近思い詰めた感じだったからさ。みんな心配してたんだぜ?と、ペンギンが言った。
シャチとベポはうんうんと、隣で頷いている。

「船長があぁ言ったんだ。だから、心配しなくていい。絶対に大丈夫!」

「本当に信頼してるんだね...。」

「「「当たり前!」」」

そう声を揃えて言った3人の顔は満面の笑みで、とても眩しかった。

「また今度、船長と俺たちの昔話でもしてあげるよ」

「ほんと?楽しみにしてる。」





時は止まることを知らない。無常にも恐れていた事態が起こった。白ひげ海賊団と海軍の戦争。
その光景は今、全世界へ映像として発信されている。

ローも名前も船員達とともに、食堂に集まってそれを見つめていた。
この世の終わりとも言えるようなその光景に息を飲み、誰一人喋ろうとはしない。
静かな空間の中に、激しい戦いの音だけが鳴り響いていた。

インペルダウンでの大脱走劇と戦場へなだれ込む囚人達。麦わらのルフィがエースと義兄弟であり、ドラゴンの実の息子であるという事実。この戦いを見ているもの達が、動揺を隠せないのも無理はない。

「麦わら屋が革命家の...ククッ。どこまでも面白いやつだ。」

それからすぐに海軍が大きく仕掛ける。複数のバーソロミュー・クマが、白ひげ海賊団たちを囲んだ。

「あれは...あの時の...!」

「どういうことだ?」

ここにきて大きく事態は動き、最終局面へと雪崩こんでいく。そして次の瞬間、誰もが想像していなかった出来事が起きた。
白ひげが傘下の海賊に刺されたのだ。

「な、なんだ!?」

「仲間割れかっ!?」

「静かにしろ。聞こえねェ。」

ガヤガヤと騒ついた室内が、一気に静かになる。
仕組まれた戦争?状況が掴めないまま、プツンと映像が切れた。

「あ、切れた!」

「船長、どうしましょう!あっちが通信を切ったみたいだ」

「ちっ。...船を出す。」





「「「船長っ!!」」」

「ロー、また映った!」


″バギーだ!!伝説の...。″

マリンフォードへ向かう途中、途切れていた映像が再び映った。
破壊された処刑台。そこに火拳のエースの姿は無く、麦わらのルフィとともに、海軍相手に2人の戦う姿が映されていた。
白ひげはまだ生きていたが、その外傷はひどい。

「おい、ベポ!まだか?」

「アイアイ、キャプテン。あともう少し!急げジャンバール。」

ローと名前は画面を見つめる。
2人の間に言葉はないが、今は必要無かった。ただ目の前の出来事を受け入れる、それだけしかできない。

「火拳が...白ひげも...。」

瞬く間に全世界へと広がるニュース。火拳のエース救出失敗と、白ひげの死。
名前はその事実にただ息を呑むだけ、その傍らでローは前を見つめていた。

「キャプテン、もう着くよ。」

静かな空間を裂く元気なベポの声。

「ああ、分かった。行く。」

そばに置いてあった長い刀を持ち、甲板へ出るドアへ向かうローのあとを、名前は待ってと追いかける。
ドアの前に到着してすぐに、ベポからの連絡が入った。ドキドキと脈が強くなる。

「目的のポイントに到着しました!」

「よし、浮上しろ。」

カチャリと刀の冷たい音を立てるロー。名前はまだ見ぬシャンクスの安否を心配しながら、その数歩後ろに立った。
緊張か恐怖かで震える手に、ぎゅっと力を込める。

ガコーーーッ。

開けられたドアから差し込む光。空の色は暗く火薬の匂いが立ち込めていて、今回の戦争の激しさを物語っていた。
そしてローが高らかに声をあげる。

「麦わら屋をこっちに乗せろ!!
麦わら屋とはいずれは敵だが、悪縁も縁。こんなとこで死なれてもつまらねェ!!
そいつをここから逃がす!!!一旦俺に預けろ!!!」

「俺は医者だ!!!」





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