「新しい生活の始まり」




 俺は人間だったのだが、何故かポケモンになってしまい、そして記憶喪失になったらしい。

 という訳で少しでも早くポケモンになった理由が分かるよう、記憶が取り戻せるよう、俺は日記をつけていこうと思う。

 俺を見つけたのはリフィネ……リフィネ・カミューズというチコリータだった。明るく元気だが暴力的である。起こされるときに思いきり殴られた。あれは酷い。初対面であれはない。
 本人に言うとなかなか起きなかった俺が悪いらしい。

 ついでに俺のことも記録しておこう。
 名前は柊 蒼輝。元人間だったがミズゴロウになった。起きた時からずっと右手首につけているビーズでつくられたブレスレットは、何故だかとても大切な物に思える。
 だが記憶は戻ってこない。欠片も思い出せなかった。

 あぁ、あと恨みのために書いておこう。
 リフィネに最初に俺の名前を言うと「ヒイラギソウキ? あはは、変な名前!」と爆笑された。いつかアイツに復讐してみせよう。

 とりあえずリフィネにこの世界の事情を聞いた。
 どうやらこの世界では人間≠ヘお伽話でしかでしかいないと思われているらしい。じゃあ俺は一体なんなんだ。
 そして最近 この世界では災害が多くおこっている。今日もリフィネと話していると地震がおきた。だが何度もあるらしく、リフィネは取り乱さずに、「あぁまたか」みたいな感じだった。

 その地震の際、バタフリーのミネさんの子供のミフィというキャタピーが溝に落っこちてしまい、助けに行くことになった。

 そのために不思議のダンジョンという、入るたび地形が変わるという不思議な場所にいくことになった。
 俺はミズゴロウが使える技をとりあえずバンバン使わせてもらった。貴重なもんで。リフィネを見る限りでは弱くも強くもなかった。まぁ、一般だな。そう思えた。
 本人にいうと「何でハッキリ言うのさ、バカァァァ!」と言って殴られた。理不尽だと思う。

 しかしダンジョンに入ると泥がついて泥がついて……正直イライラしたがタオルもハンカチもないので諦めた。
 汚れる。最悪だ。クソッ、何でこうも外は汚れるような場所ばかりなんだ……!

 まぁ何だかんだでミフィは助けられたんだけど。おかげさまでミネさんからお礼をいただいてしまった。何か申し訳ない。 
 あと何故かミフィがキラキラした目で俺たちを見ていた。
 多分だけどリフィネが高々に何か語っていたからだと思う。なんだっけ……「命を助けるなんて当然だよ! 見捨てたら一生 後悔するんだからな!」と何故か似合わない言葉で言ってた。
 俺が笑いを堪えていたのはミネさんしか知らない。

 ……で、ミフィとミネさんが帰った後、リフィネが俺を「救助隊」なるものに誘った。
 リフィネは昔、救助隊ではないが、それと同じよーなことをしているポケモン達に助けられ、救助というものに憧れを持ったらしい。因みにミフィに言っていた言葉をそれの受け売りだとか。
 まぁ、記憶がないしやることも特にないのでやらせてもらうことにした。このままいても何もならないし。

 チーム名は何故か俺が決めさせられた。そしてリフィネ直々にリーダー指名。何かこのままいくと俺はアイツの下僕にさせられそうだ。恐ろしい。
 テキトーに思いついた「ベテルギウス」を提案すると、すぐに許可を得られた。
 ……まぁ、許可されなかったら「お前が決めろ」と言うつもりだったのだが。

 とにかく寝るところがない。困った。
 そんな俺にリフィネは実に立派な家を紹介してくれた。誰も使っていないらしく、ここを使えばいい、と。
 使っていいのか。うーんと唸ること1分でリフィネに殴られて考えることを放棄した。ありがたく使わせていただこう。

 その後リフィネは「明日も来るからねー」と言って帰っていった。嵐のような奴だ。

 家の中をあさると、まぁそんなに物はでてこなかった。撤去されているのだろう。
 一応 書いておくがこの日記はここにあったものであって、使っていいものかは知らない。しかし俺は盗人ではないからな。もう一度書くが盗人ではない。

 とにかく掃除をした。雑巾みたいなものが何枚かあったのが救いだ。外には水があるし。
 埃1つないように掃除し、満足がいった時には真っ暗だった。やばい、熱中しすぎた。明日 起きられないかもしれない。

 ここまで書いて、振り返ってみても、何も思い出せない。
 とりあえず明日またリフィネという名の嵐が来るらしいので、もう寝ようと思う。おそらくアイツのテンションは高いはずだから。





 

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