ある英雄の日記




 真夜中。いつも騒がしいギルドだが、やはり寝ている時間は不気味なくらい静かな空間がうまれる。そんな空間で、スウィートは目が覚めてしまったため、食堂で水を飲みに行っていた。
 少量の水を飲んでから、スウィートは自室を戻る道へと進む。本当に静かで暗く、フォルテだったら怖がっていそうだ。スウィートは怖がる様子などないが。

 そしてそのまま進んでいこうととすると――

「あれ? スウィート?」

「ひゃあ!?」

 声をかけられると思っていなかったスウィートは思いきり飛び上がった。そして素っ頓狂な声まで出た。
 恐る恐るといった風にスウィートが声がした方を見ると、そこにはロードの姿。

「どうしたの? 眠れないとか?」

「は、はい。目が覚めてしまったのでお水を飲みに……」

 未だバクバクといっている心臓を落ち着かせようとするが、よほどビックリしたらしく中々治おさまる気配はなかった。

 気配は感じなかった。ついでにドアを開けた音も聞こえなかった。
 だから気付かなかった。だからこそスウィートもこんなに驚いたのだ。まぁ、誰でも急に声をかけられたら驚くが。

「あ、そうだ♪ スウィート、ちょっと来て。いいもの見せてあげる♪」

「いいもの……?」

 そう言うとロードは部屋へと入っていってしまった。
 どうしよう、とスウィートは悩んだが、来てと言われてしまえば行くしかない。

 スウィートはロードの部屋へ足を踏み入れた。
 ロードを見ると、何かをとって、そしてスウィートに向き直った。そして持っていたものをスウィートの前に出す。
 それを見てスウィートは首を傾げた。

「これ、本……?」

 ボロボロになってしまった本のようなもの。スウィートが中身を見ると本ではないことが分かった。
 綺麗な字で書いてある日記だった。そしてスウィートは見ているうちにその文字が足型文字ではないことに気がついた。だが自分は読める。

 するとロードが笑顔をうかべたまま喋った。

「それはね、元人間だったポケモンが書いた日記なんだ♪」

「も、元人間!?」

 ロードの発言に驚き、スウィートはもう一度 日記を見た。

(これ……もしかして人間が使ってた字……?)

「そのポケモンはね、救助隊をやっているんだ。最初の頃くらいかなー、その日記」

「どうして親方様はコレを私に……?」

「んー、僕じゃ読めないんだよ」

 あぁ、とスウィートは納得した。
 これはポケモンが使う足形文字ではなく、人間が使う文字で書かれている。ロードが読めるはずもないだろう。

「スウィートも元人間らしいし、よめるかなって思って♪ それに結構な英雄さんなんだ、ある地域では。だから今後のヒントにもなるかもよ?」

「……ありがとうございます。えっと、じゃあ読ませてもらいますね」

「返すのはいつでもいいからね〜♪」

 一応スウィートは「おやすみなさい」と言って部屋を出た。
 そして手に持った日記を見ながら自室に戻る。皆が寝ていることを確認し、隅っこの方で小さなランプを用意する。

 そしてスウィートは日記を開いた。

(どんな人が、ポケモンになって、どんな生活を送っていたんだろう?)





 

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