探検隊結成

 中に入るとすぐに梯子があった。
 その右には「ようこそ! プクリンのギルドへ!」と書いてある、矢印の形をした看板、左には「プクリンのギルド   探検隊 心得   十か条」と書いている、四角の形の看板。

(これは覚えていたほうがいいよね……)

 ギルドに入ったスウィートは、四角の形の看板を見ることにした。
 アルもそれに気付き、看板を見る。

『ひとーつ! 仕事は絶対サボらなーい!
 ふたーつ! 脱走したらお仕置きだ!
 みっつー! 皆笑顔で明るい笑顔!
 よっつー! 依頼は『受ける』をした後『実行』を忘れずに!
 いつつー! 探検にいく前には道具をチェック!!
 むっつー! 探検にいく前にはれんけつ技もチェック!!』
 ななつー! 探検中は慌てず騒がず冷静に!
 やっつー! 困っているポケモンを助けるのも探検隊の大事なつとめ!
 ここのつー! 依頼を沢山こなして目指せ憧れゴールドランク!
 とおー! 稼いだ賞金はギルドで分けるよ!
   皆、友達!友達〜〜〜!』

 最後の友達、というところが強調している。余程このギルドでは大切なようだ。一見、馬鹿っぽそうに見える内容ではあった。
 最後まで読むとフォルテの声が梯子の下から聞こえた。

「ちょっとー!! 何やってんのよ! 早く降りてきて!!」

 スウィートはキョロキョロと辺りを見る。見るとシアオもいない。もう梯子の下に行ってしまったようだ。
 スウィートは慌てて梯子を降りる。だが

「ふぇっ!!??」

 イーブイの体にまだ慣れていないため、ドシンッという音をたてて、派手に梯子から落ちた。

「ス、スウィート大丈夫!?」

「怪我ないかしら!?」

 音で気付いた心配してシアオとフォルテが近づいてくる。
 スウィートは「いたた……」と言いつつも起き上がる。周りを見ると沢山のポケモンがスウィートを見ていた。
 勿論、すばやい動きでシアオの後ろに隠れた。

「スウィート、気をつけろよ」

 続いて降りてきたアルがスウィートに声をかける。
 スウィートは恥ずかしそうに「ごめんなさい…」と小さな声で言った。すると

「おい! さっき入ってきたのはお前らか!?」

 と少々うるさい声がかかった。スウィートはビクッと体を揺らしてから、顔だけ見えるようにシアオの後ろに隠れる。
 声をかけてきたのはぺラップだった。

「そうですけど……」

 シアオがおずおずと答える。
 そんなシアオの様子も気にせずぺラップは気の強そうな声で続けた。

「私はディラ・トラクティ♪ 情報通であり、親方様の一の子分だ♪」

(こいつ……自分で一番って言ったわよ……。あたしこういう奴大嫌いなんだけど……)

 とフォルテが思っていたのは、本人だけしか知らない。
 アルだけは少し予測したのか、溜息を小さく、誰にも気付かないようについたが。

「勧誘やアンケートならお断りだよ! さぁ、帰った! 帰った!」

 ぺラップことディラはどうやら勘違いしているらしい。
 4匹を追い出すような事を言っている。だがそんな態度に黙っている訳がないポケモンが1匹いるわけで――

「ふざけんじゃないわよ! なんなのよ、その態度!! 話し聞きなさいよ! この鳥が!!」

 フォルテはアルが止める前に、喧嘩を売るような言葉を言ってしまった。シアオは冷や汗をかき、スウィートはオロオロしている。シアオの後ろで、だが。
 勿論ディラも怒っているような顔をしていた。慌ててアルが弁解する。

「すみません、コイツは放っておいてくれて結構です。それと勧誘とかじゃなくて、俺らは探検隊になりたくて来たんです」

「た……探検隊だって〜〜〜〜〜〜!?」

 探検隊、と言った瞬間、ディラが凄いでかい声をあげる。
 4匹は「いきなり何なんだ……」的な目でディラを見る。フォルテは青筋を浮かべているが。
 ディラは後ろを向き

「今時ギルドに弟子入りしたいなんて……修行が厳しくて脱走する者も後を絶たないというのに……」

 ディス自身は独り言のつもりなのだろうが……まる聞こえである。
 恐る恐るシアオがディラに尋ねた。

「修行って……地獄のように厳しいの?」

(地獄のようにとは言ってないよ、シアオ……)

 スウィートは心の中でツッコむ。本人は全く気付いていないが。
 すると急いでスウィート達の方へ振り返り、無理して作った満面の笑顔で言った。

「はっ!?そんな事ないよ!修行はとーっても楽チンだよ♪」

「……言ってること全然違うんですけど…………」

 ディスの言っていることにアルがツッコむ。がスルーされた。

「探検隊になりたいならそうと言ってくれればいいのに♪」

「あんたが話全然聞かなかったんでしょーが」

 次はフォルテ。やはり機嫌はかなーり悪いようで、喋り方にも怒りが少々混じっているのが分かる。
 スウィートは落ち着いて、と先程から宥めようとしているが、無意味である。

「ほらっ、お前達、ついておいで♪」

 やはりスルーした。そして梯子を上機嫌で降りていく。
 フォルテは納得いかない様な顔をしながら「あの鳥……いつか絞めてやる……」と愚痴を吐きながら梯子を降りた。
 これ以上注目を浴びないようにとそそくさと、梯子を降りるスウィート。
 シアオはウキウキしながら落ち着かないような感じで梯子を降り、アルはこの先が心配だ……と考えながら梯子を降りるのだった。










 梯子を降りるとポケモンは全然いなかった。

「ここは主に弟子達が働く場だ。チーム登録はこっちだよ」

 ディラが再び歩き出す。4匹はついていく。
 するとディラはドアの前で止まった。その近くには窓があり、シアオが窓に近づく。
 そして――

「わぁっ! スゴーイ! ここ地下二階なのに外が見えるよ!」

 とはしゃぎだした。小さな子供のような仕草に、スウィートは少し笑った。
 それでディラが黙っている訳もなく

「いちいちはしゃぐんじゃないよ! ここは崖の上に立っているんだから見えてもおかしくないんだよ!」

 ディラに怒られシュンとするシアオ。
 勿論2匹は呆れたような顔をしていた。その2匹はいうまでもないだろう。

「……ここは親方様の部屋だ。くれぐれも粗相のないようにな」

 そう言うとディラはコホン、と咳払いしてからドアを叩く。

「親方様、ディラです♪ 入ります♪」

 ディラが部屋に入るとともに、4匹も入る。
 見るとピンク色のポケモン、プクリンが座っていた

「親方様。この4匹が新しく弟子入りを希望している者達です――って、親方様?」

 ディラは何を言っても反応しないプクリンにそーっと近づこうとする、と

「やぁ!! 僕、ロード・シャーレル!! ここのギルドの親方だよ?」

 プクリン――ロードがいきなり振り返った。
 その瞬間スウィートは隣にいたシアオの後ろに隠れ、ディラ含める4匹は小さな声、悲鳴をあげた。
 だがロードは全く気にせず続ける。

「探検隊になりたいんだって? じゃあ、一緒に頑張ろうね! とりあえず君達のチーム名を教えてもらえる?」

 勝手に進めていくロードに全然ついていけなかったが、チーム名というところはしっかり聞けた。

「チーム名……考えてなかったな……。なんかあるか?」

 と3匹に尋ねるアル。
 シアオとフォルテはうーん、と頭を悩ませる中、スウィートが小さな声で言った。

「えっと……『シリウス』っていうのはどうかな……?」

「「「シリウス?」」」

「う、うん。『シリウス』って一番光り輝いている星だから……その星のように輝けますように、って……」

 スウィートは恥ずかしそうに言うが、3匹はしっかりと聞き取っていた。

「いいね! 僕は賛成!」

 とシアオ。

「あたしもいいと思うわ」

 とフォルテ。

「俺も。意味がしっかりしてるしな」

 とアル。
 全員納得したようだ。スウィートは安堵する。でも自分が考えたものなんかでいいのだろうか、と悩んだ。
 そしてアルがロードのほうを向き

「じゃあ、『シリウス』でお願いします」

 と言った。ロードはニコニコしながら

「リーダーは誰かな?」

「スウィートです」

「え、えぇっ!?」

 ロードの問いかけにしっかりとフォルテが答えた。
 スウィートは「無理! 無理だから!」と言いながら首を横に振っている。
 だがロードがかわらない笑顔で、勝手に話を進めていく。

「じゃあ登録するよ〜! 登録、登録、みんな登録……」

「お、お前達、今すぐ耳をふさげっ!!」

 いきなりディラに言われ戸惑った4匹だが、言われたとおりに耳を塞いだ瞬間――

「たぁーーーーーーーーっ!!!!」

「「「「!!!???」」」」

 ロードがいきなりハイパーボイスをくりだした。
 凄い衝撃波だったがすぐに止まった。耳を押さえていても凄い煩かった。
 スウィートはまだキンキンする頭で

(ギ、ギルドが少し揺れたような……気のせい、なのか……な)

 と疑問を抱いた。だがそんなはずもないだろう、と気のせいということにしておいた。
 ハイパーボイスをくりだした張本人・ロードはずっとニコニコしている。

「おめでとう! これで君達も立派な探検隊だよ♪ これは僕からのプレゼント♪」

 渡されたのは箱。開けてみると中にはバッグ、バッチ、地図が入っていた。

「まず、このバッチは探検隊バッチ。探検隊の証だよ♪ そのバッチで救助を求めているポケモンにかざすとこのギルドの前まで送ってくれるよ♪ あと、探検隊のランクによって色が変わるから♪
 これはトレジャーバッグ。ダンジョン内で拾ったものはこのバッグに入れてね♪バッグは君達の活躍によって大きくなるからね♪
 そしてこれは不思議な地図。とっても便利な地図だよ♪」

 スウィートはトレジャーバッグを開けてみた。すると色々入っていた。ロードのほうを向き、尋ねてみる。

「あの、これは……」

「あ、それは身につけてね♪ ピンクリボン、レッドリボン、ブルーリボン、きみどりリボン♪
 リボンはスカーフやバンダナにも出来るから好きなところにつけてね♪」

 ロードに軽い説明をしてもらった後、少しの話し合いの末、スウィートがピンクリボン、シアオがきみどりリボン、フォルテがレッドリボン、アルがブルーリボンということになった。
 全員スカーフにして首に巻くことした。
 うれしそうな顔をしてシアオがロードに向かって

「ありがとうございます! これから僕ら頑張ります!!」

「あんたが一番頑張らなくちゃいけないんだけどね」

 お礼と意気込みを言ったのだが、フォルテの言葉にうっ、と詰まってしまう。
 ロードは頑張ろうね〜♪ とのんきに言ってからディラのほうを向き

「じゃあ今日はもう遅いから寝よ〜♪ ディラは部屋の案内してあげてね♪」

「分かりました」

 そして部屋を出る際、ロードが明るくおやすみ〜♪ と言っていたのに、4匹はどう反応すればいいか迷ったのは言うまでもない。










「ここがお前達の部屋だ♪ 明日からはしっかり修行するから夜更かしするんじゃないよ!」

 そう言うとディラは出て行った。案内された部屋は葉はベッドが4つほど置いてあり、4匹が体を伸ばしても大丈夫ぐらいの広い部屋だった。
 部屋に入るなりシアオとフォルテはベッドに飛び込んだ。スウィートとアルはベッドに座った。フォルテは目を瞑りながら

「にしても……疲れたわ。修行がどうとか言ってたし……もう寝ましょ」

「そうだね……。ふぁ……私も……眠い、かも……」

 と言いながらスウィートが小さな欠伸をする。完全にかも、ではすまない状態になってきている。
 アルもベッドに寝転がり

「もう寝るか……。おやすみ」

「僕も……おやすみぃ」

 シアオもアルも寝るようだ。スウィートもベッドに寝転がる。そして部屋が静かになり、外の音以外聞こえなくなった。
 スウィートは眠いのに、なかなか寝れず、目を瞑っているだけだった。
 そして暫くすると――

「ねぇ、皆……起きてる? もう寝てるかな……」

 沈黙をシアオが破った。いきなりでスウィートは反応できず、返事が出来なかった。
 誰も返事しないがシアオは構わず続ける。

「僕……ギルドに入っれて本当によかった。まぁ、皆に迷惑かけたけど……。
 だけど……探検隊やってるうちに少しずつでも頑張れるように、変われるように頑張りたい。そして、いつか……遺跡の欠片の秘密を、解きたいな。
 皆にはまだまだ迷惑かけるかもしれないけど……よろしく、ね……」

 それだけ言うとシアオから寝息が聞こえた。きっと寝たのだろう。
 スウィートは「頑張れ」と心の中でシアオに言った。そして違うことを考え出す。

(でも……どうして私は人間からポケモンになっちゃったんだろう? 私は……なんで記憶を失っちゃったのかな……?
 ちょっとずつでいいから……思い出せたらいい、な……)

 スウィートは考えをやめ、意識を手放した。




prev content next



×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -