宝物の奪還戦

「ちょっと! そこの紫の二匹!!」

 挑発的な言葉でフォルテが怒鳴る。
 すると紫の2匹ことズバットとドガースが怒ったような様子で振り返った。怒っているのは勿論、さきほどのフォルテの発言のせいだろう。

「ほら、シアオ」

 とアルが小声で言い、シアオを肘で突く。
 シアオは怯えたような表情をする。だがいいや、と首を横に振って、覚悟を決めたよいも、2匹のほうを向いた。

「ぬ、盗んだ物を返してよ! それは僕の宝物なんだから!!」

 そして、怒鳴った。スウィートはそんなに大きな声をシアオがだすと思っていなかったようで、驚いた顔をしてシアオを見た。
 フォルテとアルはよし、と満足しているようだ。
 だが次の2匹の言葉で視線をかえる。

「返すつもりなんかねーよ! 返してほしかったら力ずくで取り返してみろ!」

 それだけ言うと、ズバットとドガースがこちらに勢いよく向かってきた。フォルテとアルはすぐに構ええ、遅れてスウィートとシアオも構えた。

「そうさせてもらうわよっ! 火の粉!」

「電気ショック!」

 2匹に向かってフォルテとアルが技を放つ。
 真っ直ぐに攻撃が向かっていっているのだから、そのまま避けられるだろう、と思っていた。
 しかし、2匹は予想を大幅にはずしてくれた。

「「ぐあぁっ!?」」

「えぇぇ!?」

「あー……」

 見事に、当たった。
 予想外の事態にフォルテは驚いたように声をあげ、アルは少し顔を顰めながら声をあげた。

(弱っっ! 避けられない訳!? アホ!? アホなの!?)

(何というか……予想外だ)

 フォルテは心の中でツッコみ、アルは呑気に考えていた。あえて口にはださないが。

「ぐっ……! やってくれたな!! 毒ガス!」

 やってくれたな、という言葉に顔を盛大に顰めたフォルテとアル。するとドガースの周りから紫の煙がふきだした。
 薄いが吸ったら毒状態になるだろう。するとどこか弱弱しい声が洞窟内に響いた。

「し、しんくうぎり!!」

 と技名を言うと、空気中から刃が出現し飛んでいく。
 刃は毒ガスを巻き込みながら飛んでいくのでガスはあっという間にはれてしまった。

「スウィート! ありがとう!」

「え、あ……どういたしまして……?」

 フォルテがその者に礼を言う。
 もう分かるだろうが、先ほどの声はスウィートのものだ。咄嗟にしんくうぎりをしガスを吸い込む前にはらったのだ。

「ぼ、僕だって……!」

 シアオは元いた場所から一瞬で消える。おそらくでんこうせっかだ。
 そのまま上手く攻撃をするつもりなのだろうが、1匹だけシアオの行動に気付いてい者がいた。

「はどうだ――」

「喰らいなさい! シャドーボール!!」

「「え」」

「うわぁっ!!??」

「ぐおっ!!」

 攻撃しようとしていたシアオがフォルテのシャドーボールに気付き、間一髪でフォルテの攻撃を避ける。代わりにズバットとドガースに当たったが。
 シアオが避けたことに、ホッとスウィートとアルが安堵の息をつく。だが本人は全然良くない訳で――

「何すんのさ!? あとちょっとで当たってたよ!?」

「し、知らないわよ! 大体あんたがとっとと攻撃してどけばいいんでしょ!? あたしのせいにしないでよ!」

 喧嘩になってしまった。勿論2匹に周りなど見えている訳がない。喧嘩に夢中だ。
 すると復帰したズバットとドガースが2匹を睨んだ。勿論、そんなことに気付いてなどいない。

「てめぇら俺らを無視してんじゃねぇよ!!」

「喰らいやがれ!!」

 ズバットとドガースが喧嘩をしている2匹に向かって行く。
 スウィートはすぐに動き、ドガースに体当たりを当てて一撃で倒した。アルもズバットに向かって電気ショックを放つが

「……!!」

「そう何度も当たると思うなよ!?」

 ズバットは電気ショックを避けそのままに引きに一直線。
 さすがのスウィートも反応できない。そしてズバットはそのまま喧嘩している2匹の元に。
 ドガッという音をたてて、見事に体当たりが2匹に直撃した。ズバットは少し勝ち誇ったような表情をしている。
 スウィートはあっ、と声をあげ、2匹に声をかけようと――

「だ、大丈夫―」

 近寄って声をかけようとしたが、止まった。アルは怪訝そうな顔をして声をかけようとしたが、アルもズバットまでもが固まった。
 それは、恐ろしい殺気を感じたから。

「邪魔をしないで!!!」
「私の邪魔をしないでくれるかしら!?」

「うっ……わあぁぁぁぁ!!!!」

 シアオのはどうだんと、フォルテの火の粉がズバットに炸裂する。
 殺気のため、ズバットは硬直状態になってしまったようだ。スウィートとアルは、心の中でズバットに合掌した。
 そしてアルは1度だけ溜息をつき、2匹に近づいた。

「お前らな……目的忘れてないか?」

 ごもっともである。スウィートは困ったような顔をして、とりあえず苦笑する。
 ズバットを倒してスッキリしたのか、2匹とも普通の状態に戻っていた。そしてアルの言葉でようやく思い出したのか、シアオはズバットとドガースの方を向いた。

「そうだ! 僕の宝物返してよ!!」

 シアオが最初のようにもう一度、2匹にむかって怒鳴る。
 先程の一部始終を見てしまったドガースは微かに震え、そして慌てながら

「も、元からいらねーんだよ、こんな物!!」

 と言いながらドガースはシアオの宝物を投げた。
 シアオは地面に落ちないようキャッチする。無事なことを確認すると安心したような表情を見せる。
 ドガースはその隙に4匹の脇をすり抜けて

「お、覚えてろよ!!」

 とお決まりの捨て台詞をいい、ズバットを引っ張って逃げていった。
 するとその様子を見ながらフォルテが

「いらないんだったら盗むなっての。ホント、腹立つ奴らだったわ」

 とぶつぶつと文句を言い出した。スウィートはやはり隣で苦笑いをしている。
 その様子をみてアルはため息をついた。そして自分達が通ってきた道をさして

「とりあえず戻るぞ」

 スタスタと歩いていった。
 スウィートは急いでついていき、フォルテとシアオはのんびりと歩きながら元の道を戻った。










「スウィート、ありがとね!フォルテとアルも!!」

 海岸に行くとすぐにシアオがお礼を言ってきた。
 フォルテは「おまけみたいに言わないでくれる?」と愚痴をはいているが。

「う、ううん……。私は特に、何も……」

 と顔を伏せる。スウィートの本音は面とお礼を言われると恥ずかしいだけ。
 すると愚痴っていたフォルテが会話に加わってた。

「ねぇ。スウィートに宝物見せてあげれば?」

 そうだね、といって、その提案にシアオは頷いて宝物をだす。
 宝物は何かの欠片みたいで、不思議な模様が描かれていた。スウィートは首を傾げる。

「これって……?」

「ぼくは遺跡の欠片ってよんでるんだ。ほら、不思議な模様があるでしょ?」

 シアオの説明を聞き、スウィートはもう一度まじまじと遺跡の欠片を見た。

(確かに……。こんな模様は見たことない……)

「僕はこの模様の謎を解くのが夢なんだ! だからそのために探検隊になろうと思ってるんだけど……思ってるんだけどね……」

 途端、シアオが言葉を発さなくなる。
 スウィートは首を傾げる。するとフォルテがフンッと鼻をならしてから

「実はこのヘタレ、14回も失敗してんのよ。ギルドに入門しなきゃいけないんだけど、門の前で終了よ」

「……ヘタレは余計」

 とため息をつきながら説明してくれた。
 シアオはうっ、と声をあげて、ヘタレの部分だけ訂正させた。無駄だろうが。

「で、スウィートはこのままどうする?」

 すると黙っていたいきなりアルがスウィートに尋ねた。

「え……これから……?」

(そう、だった。どうすればいいんだろう……?)

 スウィートは何も言わず考えるばかり。どこに行けばいいんだろうか、と。
 暫くしてから、シアオが口を開いた。

「もしもよかったら、一緒に探検隊にならない?」

「探検隊……?」

 スウィートはオウム返しのように言葉を繰り返す。
 シアオはキラキラと期待の目をむけている。すると加勢するかのように、フォルテとアルも加わった。

「私も、是非なってほしいわね。♀一匹とか嫌だもの」

「俺も。楽しそうだしな」

 フォルテとアルも同じ意見のようだ。
 スウィートはどうしようか、と考え、迷ったが

(でも……行くとこもないし……。知り合いはシアオ達しかいないから……)

「えっと……私が入っていいのなら……お願い、します……」

 とスウィートが言うと、シアオはパァッと顔を明るくさせた。フォルテとアルも笑顔で見ていた。
 するとシアオは勢いよく指をさし

「大歓迎だよ!!ありがと、スウィート!!じゃあ、早速ギルドにー」

 指をさした方向にむかって、何処かにむかおうとする。
 だが、痛い一言に止められた。

「じゃあ、格子の上にのってくれるよな?」

「……! えーっと…」

 アルの一言に、シアオの顔がどんどん青ざめていく。目は完全に泳いでいた。
 その様子を見たフォルテは黒い笑みを浮かべて

「じゃあ行きましょうか。ようやくギルドに入れるわね」

 そう言うと、とっとと行ってしまった。
 アルはため息をつきながらフォルテの後を追い、スウィートはシアオの様子を窺いながら追う。
 シアオは表情を固めて、後を追った。




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