無知な奴はこれだから困る

 ……状況を整理しよう。

 まず、私達は依頼を実行するために“湿った岩場”に来た。そしてB3階までは順調に進んでて。
 私はシアオの会話を聞きながら前を歩いて(歩かされて)た。けど、進んでるといきなりシアオ達の声が聞こえなくなって、それに風景が変わってて。
 気がついたら皆がいない……っていう状況。

 ……おかしいな。1回目でこういう事はおきないんじゃなかったっけ?私、聞き間違えたのかもしれないなぁ。

「それにしても……皆、何処……?」

 私はとりあえず進んでいるけど、会うのは敵ポケモンばかり。
 皆、先に進んでるって事はないよね……?ないといいんだけど……。なんか不安……。
 私はとりあえず色々関係ない事を考えながらも進んでいった。

 暫くいろんな事を考えながら進んでいると――


―――――…我……し………………き……え……――――

「えっ?」

 途切れ途切れな声が聞こえた。
 周りを見てみるけど誰もいない。もう一度周りを見てみたけど誰もいなかった。

「空耳……かな……?」

 誰もいないし、空耳と考えるしかない。
 少し気になったものの、考えていてもしょうがないし、もう何も聞こえないから進むことにした。

 暫く進んでいても敵ポケモンばかり。あれ……? 私って……不幸なのかな? 違うと信じたいけれど、それなら何でなかなか会えないのだろう?
 またまた無駄なことを考えていると、黒と青の体をした何かが見えた。すぐに身構えたけどすぐに解いた。
 だってあれは……シアオだ!!私は駆け寄り声をかけようとする。

「シア――」

 が、止めた。なぜなら……いきなりシアオが――――消えたから。一瞬で。
 私の声、聞こえていないと思う。すぐに消えちゃったから……。

「え……? どういうこと……?」

 シアオがいた場所を見てみる。けれど何も無い。
 試しにその場所に立ってみるが何もおこらない。……どうなっているのだろう?










(Side フォルテ)

「いたたた……。ったく、酷い目にあったわ……」

 あたしは少し痛むか体をなんとか起こす。飛ばされたときに強く打ち付けたようだ。

 にしても……誰よ、突風スイッチなんか仕掛けた奴は……。見つけたら絶対に灰にしてやるんだから……。
 というかあんな話をしたからかしら? 1回目にしてこんなアクシデントがおこるなんて……。
 今頃アルが頭抱えてんのが目に見えるわね。
 今の状況を一言で表せれる自信があるわよ。えーっとね、最悪最低。我ながら完璧ね、うん。
 ってそんなくだらないこと考えてないで

「探すか……」

 あたしはとりあえず皆を探すことにした。ジッとしてても意味ないしね。
 歩いてりゃ誰か1人くらい会えるでしょ。というか会えないと凄く困るんだけどね……。
 進んでいるとやはり敵ポケモンは襲ってくる。カラナクシは相性が悪いからあまり戦いたくないわね……。
 そんな事言っても出てくるもんは出てくるんだけど。

「それにしても火炎放射が撃てるようになってるのが不思議ね……。いつ覚えたっけ??」 

 便利だし、威力高いからフツ―に使ってるけど。
 よく考えると不思議よね〜。あたしはとりあえず記憶を探ってみるが、技マシン使った覚えもないし……いきなり覚えた記憶もない。
 あたしは一体、いつ覚えたんだろうか?

「ん? あれって……」

 あたしはちょっと遠くにいる見覚えある姿を見つけた。
 向こうも気付いたようで、手を振りながらこっちに近づいてくる。

「フォルテーー!! 無事だった?」

「ええ。アルとスウィートは?」

 と相手に話す。会話からして分かるだろう。近づいてきたのはシアオだ。
 ……なんか姿がほんのちょっと変わった気がするんだけど……気のせいか。

「会ってないよ。フォルテは?」

 なんだ、会ってないのか。まぁ、1匹見つけただけまだマシだろう。
 さて、シアオの質問にあたしも答える事にしよう。

「こっちもよ。会って――え?」

 あたしは言葉をとめた。それは……喋っている最中にシアオが消えたから。ワープスイッチで消えた、あの時と同じように。
 あたしはすぐにシアオが元いた場所を確かめる。けれど何も無いし、立っても何にもおきない。
 ワープスイッチじゃない……?だとしたらなんなのだ。

「やっぱりね……」

 あたしはため息をついた。考えていたことが的中したから。
 シアオが絶対に面倒くさいことをおこす、って。流石はトラブルメーカーと言うべき存在。
 あたしは何故か関心していた。と、そこに

「あれ……? 此処通ったかな……? あそこを右だったかなぁ……」

 不安そうな弱々しい声が聞こえた。振り向いてみると、オロオロしながらブツブツと何か呟いているスウィートがいた。
 あたしは大きな声で呼ぶことにする。

「スウィート!!」

 ビクッとスウィートは体を揺らしてから、恐る恐ると振り向いた。
 大きな声をだしすぎたかしら……? だけどあたしを見たらパッ、と顔を明るくさせて駆け寄ったきた。

「フォルテ……!! あれ? 皆は?」

 そういえば……スウィートが一番初めにワープしてったから、皆バラバラになっちゃったこと知らないんだっけ。
 あたしはスウィートにこれまでの経緯を話した。勿論、罠の事もきちんと説明したわよ?

「スウィートは誰かに会わなかった? 見たとか……」

 とスウィートに尋ねるとスウィートは小さな声であっ、と呟いてから

「シアオを見たけど……いきなり消えちゃって声をかけられなかったんだ……」

「へ? スウィートも?」

 シアオは消えたり現れたりしてるわけ? 何これ、ホラー? うわっ、考えたくない……。

「フォルテも…? おかしいよね…。罠じゃないと思うんだけど…」

「それはあたしも思うわ。でも……だとしたら何故、消えたのかしら……?」

 あたしとスウィートは頭を悩ませるばかりだった。











(Side:アルナイル)

 探すのも面倒くさい。俺は岩に腰をかけて座って考えていた。
 何故こんな風に厄介事が毎回のように起きるんだ?
 俺達の中の誰か、不幸を呼び寄せる奴が……。それともこれは偶然なのか?
 ……必然というのは考えたもない。

「……呪われてんじゃないのか」

 ポツリと呟いてみる。返事など返ってくるはずもない。さっきから誰も来ないからな。
 敵ポケモンさえ来ない。それは非常に嬉しいのだが……仲間に会えないのは非常に困る。
 考えていたら眠くなってきた。

「ふあぁ……眠ぃ……。寝てたら来るか……?」

 ……そんな発言をしてみたが、なんか恐ろしい。
 フォルテに見つかったら「こんな時に何、呑気に寝てんよ!?」と怒鳴られて、叩き……いや、殴り起こされそうだ。
 シアオだと耳元で「起きて〜〜!!」などと騒ぎそうだし……。スウィートは普通に起してくれるだろうけど。
 ……フォルテに見つかったら殺されかけないな。起きとくか……。
 
 でも暇なもんは暇だ。だからと言って下手に動くとすれ違いがおきそうだし……。ジッと待っとくしかなんだよなぁ……。
 欠伸をしながら座っているといきなり――本当にいきなり、目の前にシアオが現れた。
 それで驚かない奴なんかいるか!?

「うおっっ!? いきなり現れんなよっ!! 心臓に悪いだろーが!!」

「へ!? アル!? なんか知らないけどゴメンナサイ!!」

 落ち着け、俺!! シアオよりパニックしたらめちゃくちゃ恥ずかしいぞ!?

「アル、酷くない!?」

 コイツ……いつエスパーになったんだ……!! 他人の心の中を読めるだと!?

「……さっきから声に出してるって」

 そう言いながらシアオにため息をつかれた。…コイツにため息つかれるとかめちゃくちゃ腹が立つんだが。一発、殴ってもいいのか?それとも電気技のほうがいいか?
 俺は無意識に電気をためるのと、殴る準備をしていて。シアオがそれを見て青ざめた顔で「ごめんなさい、ごめんなさい!!」と一生懸命謝っている。
 ……まぁ、くだらない事だしいいか。殴らなくても(殴りたいが)。

「ん……? シアオ、それなんだ」

 シアオの首にまいてあるスカーフを指差す。こいつはきみどりリボンをスカーフにしてつけてたよな……?
 今シアオがまいているのは俺の記憶が正しければ……

「ああ、これ?なんか落ちてたからつけたんだ」

 それは、ワープスカーフだ。

「何つけてんだ、お前!! とっととそのスカーフはずせ!!」

「へ? なんで――」

 するといきなり、シアオが消えた。
 遅かったーーーーー!! はずす前にワープしやがったよ、アイツ!! 本気でトラブルメーカーだな、シアオは!!
 俺らのトラブルってシアオのせいでおこってんじゃないか!!??
 俺は内心、愚痴を漏らしていると

「あっーー!!いたいた、アル!!」

 聞きなれている声がした。振り返るとさっきの声の元、フォルテとスウィートがいた。
 探す手間が省けたのはいいが、一匹はついさっきワープしてったぞ……。

「あ、シアオ見なかった……?」

 スウィートが恐る恐る尋ねてくる。フォルテは俺の返事など待たずに色々話してくる。
 その中に、気になるものがあった。

「シアオが消えてさ〜……。原因不明なんだよね」

「おい、フォルテ。お前原因分かるだろーが」

 俺とシアオとフォルテは探検隊になる前に、道具の事を一通り学んだ。シアオは寝てたけど。
 フォルテは起きてたよな? ワープスカーフの事も知ってるはず……。見た覚えが俺にはあるぞ……?
 が、フォルテは怪訝そうな顔をしてから

「はぁ? 急に消えられて罠でもないのに、原因分かる訳ないでしょ?」

 ……期待した俺が馬鹿でした。今度からシアオとフォルテには学習、というものには期待しません。今度からはスウィートを1番に頼ることにしよう……。

 はぁ、とため息をついてから、シアオがワープスカーフをつけているせいで、ずっとワープしているという事を説明した。
 スウィートは成る程、という風に納得していた。フォルテは「あんの馬鹿……!!」とシアオに愚痴っているが、俺はお前にも愚痴りたい。
 しかし、今はシアオを探さねば。

「まずシアオをどうにかしないとな」

「そうね。待ち伏せしてワープしてきたとこを捕まえる?」

 どんな作戦だよ……それ。何時間かけて確保するつもりだ、コイツは……。
 俺は即、却下した。だが自分自身もいい案が思いつかないんだよな……
 と頭を悩ませていると、スウィートが恐る恐る発言した。

「あの……この集まれ玉って……使えるのかなぁ?」

「「…………」」

 スウィートの発言に、俺とフォルテは固まった。
 ……確かに、簡単な解決方法があったもんだな。なんで思いつかなかったんだろーな……。俺も馬鹿なんだな……。
 フォルテとシアオほどではないが。にしてもスウィートもなんでコレを使わなかったんだ? いや、使い方が分からなかっただけか。

「そういえば拾ったわね。スウィートと合流した後に。スウィートまだ持ってる?」

「うん。1個だけだけど……」

 スウィートはそういうと集まれ玉を取り出した。後はシアオを確保する作戦だな。

「じゃあ、スウィートが集まれ玉使ったら、俺とフォルテでシアオを捕獲――でいいか?」

「うん」

「了解よ」

 俺の提案に、2匹ともすぐに承諾してくれた。……後はシアオを捕まえるだけっと。
 スウィートに玉の使い方を教えた後、全員で準備をする。
 スウィートが俺とフォルテに目で合図する。俺とフォルテが首を縦に振ると、スウィートは集まれ玉を投げた。




(Side  out)

 ピカッと、スウィートが集まれ玉を投げた瞬間、光が放たれた。一瞬だが。
 光が収まると頭に疑問府が浮かんでいるシアオが立っていた。まだワープスカーフを身に付けている。

「よしっ! 取るわよ!」

 とフォルテが大きな声で言うと、アルとフォルテが走り、シアオの元に行く
 。シアオはようやく存在に気づいたようだが……今更だった。

「あ、皆……って、え!? 何!?」

「「大人しくしてろ(なさい)!!」」

 アルがシアオを押さえつけて、フォルテがスカーフを取る。
 傍観者という感じのスウィートは、唖然とその様子を見ていた。

「取ったーー!!」

 フォルテがスカーフを放り投げる。
 するとアルはシアオを押さえつけるのを止めた。シアオはまだ困惑中だった。

「アル、どういう事――」

「一発、問答無用で殴らせてもらうわよ。これでぇ……反省しろっ!!」

「え、ちょっ、待――」

 バコンッと痛々しい音をたて、問答無用、本気でフォルテはシアオを殴ったようだ。お陰でシアオは5メートルくらいまで、ぶっ飛ばされた。

「フォルテ……やりすぎだ」
 
 アルが哀れんだ目でチラリとシアオを見てからフォルテに言う。
 フォルテはアルの言葉を無視して「スッキリした〜」などと言いながら体を伸ばしている。アルは大きなため息をついた。

 シアオは「いたた……」などと言いながら戻ってきて、フォルテに殴った理由を聞こうとしている……。
 が、フォルテはシアオを睨みつけ、そっぽを向いた。シアオはアルとスウィートの「訳が分からない」という顔をしてきた。
 そんなシアオに対して、スウィートは苦笑いをしていて、アルは呆れた目でシアオを見ていた。
 そしてアルはとりあえず、シアオがワープしていた理由を簡単に話した。

「――ってわけ。シアオ、お前今度から変なものを身に付けるな。
 つけたかったら俺かスウィートかフォルテに言ってからつけやがれ。というかいつワープスカーフをつけた?」

「えーっとね。皆とはぐれてすぐ位かな。周りの風景が変わるからびっくりはしたけど。スカーフが原因だったんだ……」

「……お前のせいで俺らはめちゃくちゃ苦労したんだけど。おかしいとか思わなかったのか?」

「全然。またワープスイッチ踏んだかな〜とか思ってたから」

 アルとシアオの会話。
 結局はシアオの最後の言葉を聞き、アルがわざとらしい大きなため息をついて終了したが。

 スウィートは「この空気は不味い……」と思い、発言することにした。

「と、とりあえず依頼の真珠を探そう? 私達の目的はそれなんだから……ね?」

「「「そういえばそうだったね(な)」」」

 その言葉を聞き、このチーム(探検隊)は大丈夫か……と、スウィートが心配になったのは、本人しか知らない。

 後は問題なく(イガグリスイッチやぐるぐるスイッチなどに何度か引っかかったが)真珠の元にたどり着き、多少フラフラになりながらギルドに帰るシリウスであった……。




――――ギルド――――

「ありがとうございますっ!! って……大丈夫ですか……?」

「「「「ええ……まぁ……」」」」

 依頼人、バネブーはお礼を言ってからシリウスのメンバーの体を見て心配した。
 4匹はゲッソリとしながら答えた。体には傷がたくさんあり、様子からして全然大丈夫そうではない。
 が、本人達は「触れないでくれ……」的なオーラをだしているので、バネブーはこれ以上気にしない事にした。

「エット……これは報酬です! どうぞ」

 バネブーが渡してきたのはタウリン、リゾチウム、ブロムへキシン……それに2000ポケだった。
 スウィート以外はこれを見てから驚いた表情をした。シアオはバネブーの方を向き、大きな声で

「え!? いいの!? こんなに沢山! そして大金!」

 と言った。バネブーは笑顔っを崩さず

「ええ。真珠に比べれば安いもんですよ。では私はこれで」

 と行って去っていった。
 スウィートは何の事か分からず、ただただ首を傾げているだけだった。シアオとフォルテはハイタッチをしたりして喜んでいた。
 そこにディラがきた。ディラはニコニコしながら

「お前達、よくやったな♪ えーと……お前達の分は……これくらいだな♪」

 と言って渡したのは……200ポケ。先ほどの一割だけだある。

「えぇぇぇぇぇ!? こんだけっ!?」

 シアオがとてつもない大きな声をだした。
 スウィートとアルは耳を塞ぎながら『プクリンのギルド  探検隊の心得  十か条』の1つを思い出した。

《とおー!! 稼いだ賞金は皆で分けるよ!》

 きっとこれの通りだろう。
 知らないシアオとフォルテはディラに愚痴をもらして、ついにはディラに怒鳴られた。アルはあーあ…と他人事のように見てる。
 ディラは怒鳴り終えると梯子を降りていった。

「あんの鳥……!! いつか絶対焼き鳥に……!!」

「フォルテ、いい加減にしろ…。大人げないぞ」

 アルにそう言われると、フォルテは「うっ」と言葉につまり何も言わなくなった(内心で愚痴を吐いているだろうが)。
 シアオは納得いかないような顔をしていたが。

「皆さーん!!ご飯ですよ〜♪」

 というアメトリィの声が聞こえると大喜びでとんでいった。
 残されたメンバーは同じことを思いながらシアオを追うように食堂に向かうのだった。

((シアオ……単純すぎ……))

 こうして初依頼は無事終わったのだった。




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