氷の戦い




「チッ、アイツらついてきてねぇ……! 役にたたねぇな!!」

 そう言いながら星雨祭≠フ会場から近い森の中を走っているのは、ニューラ。そのニューラの右手にはバッグが握られている。
 ニューラはぶつぶつと文句を言いながら、森の中を走る。

「とりあえずポケだけ盗めたからいいとするか……! ヘヘッ、大金ゲットだ」




「そりゃよかったなー、泥棒さんよ」

「!?」


 ニューラが行こうとしていた道を、氷が塞ぐ。
 ……まあそれもそうだよな。俺が冷凍ビームしたんだから。まさか俺が丁度いる方に逃げてくるとは思わなかった。
 いきなり現れたような氷にニューラは動揺を隠せないようだったが、すぐに辺りを睨みつけた。

「誰だ!?」

 威勢はたっぷりで元気なこって。
 とりあえず木の上から、氷の壁と反対側に下りる。綺麗に着地すると、振り返ったニューラと目があった。射殺さんばかりの目で俺を睨みつけている。
 本当は見逃したかったが、「盗んだ」って聞いてしまえばそうはいかない。

「この道を選んでなきゃ成功してたかもしれなかったのに。残念だったな、俺がいて」

「……ヘッ、別に気にしちゃいねぇよ。お前を倒せば関係ないからな!」

 大人しくしてくれるわけないよな。俺としては戦うの面倒だから嫌なんだが……。
 ニューラはこちらを出方を疑っているらしく、すぐには攻撃してこない。後ろの氷を壊して逃げるという手もアリなのだが、俺が何してくるか分からないためか、それはしないようだ。
 場所が場所なんだよな。

「冷凍ビーム」

 適当に冷凍ビームをして、氷のフィールドを作る。床も壁も、そして天井さえ氷。森の中に氷のドームができた。
 それにニューラが訝しげな顔をする。

「あぁ? 俺が氷タイプってわかんねぇのかよ。これじゃ俺の方が有利だぜ?」

「……野蛮人が。こんな森の中で戦ったら汚れるだろうが」

 馬鹿じゃないのか、って言わなかった俺は偉い。
 するとニューラがさらに眉をつりあげた。そして鋭く俺を睨みつけ、戦闘の態勢をとった。俺もそれに倣ってとる。
 ……そんなに気に入らなかったか、このフィールド。

「ナメてんじゃねぇよ!!」

 素早い動きで詰め寄ってきて、とがった爪を俺に向けてくる。さらに氷の床で滑らないように足の爪をうまく使ってくる。
 さすがはニューラ。素早さはぴか一だな。ただ氷の床は攻略してほしくなかった。
 そんなことを考えながら冷凍ビームで俺の真正面に壁を作る。しかしそんな壁はニューラにとっては意味がないもので

「みだれひっかき!」

 1度目のみだれひっかきで壁を壊し、2度目を俺に向けてくる。
 まあそうくるとは思ってた。

「げんしのちから」

 至近距離から技を放ち、確実にニューラを狙う。ニューラも素早く次々とくる石を爪で弾いていく。
 やるなら一気に。隙あらばとっとと殺る。

「ふぶき!」

「ぐあっ!?」

 げんしのちからに気を取られている間に、威力の高い技を叩き込む。
 因みにニューラは盗品は右手で持っているから、できるだけ左を狙った。そのために凍るのはニューラの左部分のみだ。右はそこまで被害はない。
 けどまあ、盗品なんだから大切にしなきゃな?
 自分の足に薄く凍りをはり、スパイクのように舌を棘上にする。そして氷の上を走り、氷をどうにかしようとしているニューラにそのまま詰め寄って、力を溜めた。狙う葉、頭!

「アクアテール!」

 水を纏った尻尾がニューラの頭部に直撃する。狙ったのは後頭部。
 後頭部ってけっこう大切な部分だから、そこまで強くしてないけどな? まあ気絶させるくらいのパワーで。俺だって殺人は犯したくない。殺……ポケになるのか、此処じゃ。
 倒れたニューラを見ると、見事に気絶していた。それを確認してから盗品が入っているバッグをとる。

「さて、運ぶか……」

 星雨祭≠煬牛\な色んな意味で盛り上がりになってるだろうし。
 ニューラの両手を後ろにして、弱めの冷凍ビームをして氷でくくる。それから氷の壁をしんくうぎりで割り、ニューラの片足を持って氷のフィールドから出た。
 ……やっぱ外で戦わなくて正解だった。汚れる。
 ズルズルとニューラを引っ張りながら、俺は星雨祭≠フ会場への道を辿るのだった。


 



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