メーデー、メーデー、私です。


 かぞくがこわれていく。また、こわれていく。わたしのまえから、だいすきなかぞくが、きえていく。

 どうしてカミサマはこうも意地悪なのだろう。どうして私を不幸に陥れようとするのだろう。
 母が、交通事故で亡くなった。……飲酒運転で事故を起こしたと言ったあの男の顔を、私は絶対に忘れない。忘れてたまるものか。

 母が亡くなってから、お姉ちゃんとお兄ちゃんは更にお仕事が忙しくなった。どうしてかっていうと、お金を稼ぐため。私と、妹弟たちのため。
 8人兄弟姉妹な私の家族は、母と父の収入で何とか生きてきた。
 そんな生活を指させてくれた母は、もういない。父は、母が亡くなってからおかしくなった。仕事どころじゃ、なかった。

 一度だけそんな父の部屋に忍び込んだ。そして、見てしまった。

 恐ろしい計画の書類を。

 この世界には……人を生き返らせる方法が、あるんだって。
 お伽話。そんな風に笑い飛ばしたかった。けど、父は絶対に実行するだろう。

 血の繋がっている1番 若い者と、10人の死体を用意すれば、いいんだって。
 そして、遺骨を添えて、必要なものを用意したら、その人が生き返るんだって。……11人の命と引き換えに、その人が生き返るんだってさ。

 私の妹弟で一番 幼いのは、5歳の妹。
 父がもし……もし10人の死体を用意したら、妹が、犠牲になってしまう。10人の人が、巻き込まれてしまう。
 もしかしたら、その10人は私の知り合いかもしれない。知り合いの親族かもしれない。

 もしかしたら、私もその10人の中に、入るかもしれない。



「……やだ、やだよ…………」

 私は、いい。けど、家族が死ぬのはもうごめんだ。
 ……でも、どうしたらいい? 父親に、説得すればいいの? でも、きっと耳を貸してくれない。もしかしたら私は口封じのために殺されるかもしれない。
 でも、お姉ちゃんとお兄ちゃんにも、伝えられなかった。だって、危険だから。
 警察だって、そんな絵空事を信じるわけがない。

 どうして、世界はこうも残酷なんだろう。
 前世で、私は散々酷い目にあったのに。散々、苦しい思いをしたのに。

 後世でも、幸せを望んではいけないのですか。

「……だれか……たすけて…………」

 そんなことを、言えるわけがない。だって、言ったらその人が危険だから。

 でも、私には、抱えきれないのです。
 もう、限界なのです。

「ふっ……ふぇっ……」

 誰か、助けてください。
 どうやったら家族が幸せになりますか。どうやったら家族が本来の形に戻りますか。

 どうしたら、私の望む幸せが手に入りますか。






メーデー、メーデー、私です。

(聞こえていますか? 助けてください)






「どうして、泣いているの……?」


 メーデー、メーデー、私です。
 誰かにこれが、繋がったのでしょうか。









「メーデー」っていうのは無線電話の国際救難信号らしいです。フランス語で「助けてください」という意だとか。
心の中でを助けを求めている、前世でも後世でも不幸な女の子のお話。



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