夢に溺れすぎた


※探検隊ネタ
※主人公は敵側で、ポケモンです
※ゲーム主人公とパートナーが前の転生ネタと同じ名前



「……何をやっているんだろう、私」

 闇のディアルガの刺客として、こっちの世界にきた。

 この世界に来て、まずヨノワールとはぐれた。それでも1匹で何とかやれると思った。
 私がきた場所はダンジョンで、水タイプが多い場所だった。キルリアである私はマジカルリーフで敵を倒しながら進んでいった。
 そのときに出会ったのが、探検隊をしているという2匹のポケモン。

 キルトというヒノアラシに……私が追っている者と同じ名前をしたエネコの、ユラ。

 別段そのときは何も思わなかった。
 とりあえずこの世界の者と一緒にいた方がいいと思ったから、一緒にダンジョン攻略をした。仲間意識などない。一時的な協力である、と。

 そのあと“滝つぼの洞窟”という場所をぬけると、水晶がたくさんある場所にでて、キルトが大きな水晶を引っこ抜こうとした。
 私はそれを黙って見ていた。ただこれが終わったらこの世界のことを聞こうと思っていたから。キルトが「押してみたらどうかな」と言ったときも、何も思わなかった。
 しかしユラが急に「駄目、キルト! それを押したら水が――」といった。その忠告は遅く、大量の水が流れてきた。咄嗟のことで私も流されてしまった。

 その後 温泉に落ちて色々あったが……私はユラに聞いてみた。

「ねぇ。どうして押したら水が流れてくると分かったの?」

 すると、ユラは言いにくそうに、そして言った。

「……触れたら、何かの映像が、見れた。宝石に触れたときに見たのが、押したら、水が流れてくる映像だったから」

 その瞬間、息をのんだ。
 もしかしかして時空の叫び=H ……時空の叫び≠ェ使える、ポケモン? それにユラという名前……。まるで……。

「ユラは、今までどうやって生きてきたの?」

 するとユラは顔をしかめた。しまった。唐突すぎたか。
 しかしキルトはそんな私を疑いもせずに、正直にユラの代わりに答えてくれた。

「ユラは記憶喪失なんだ。覚えてるのは……名前と……」

 そして言いよどむ。……これは、絶対に何かある。
 私が確信したとき、ユラが口を開いた。


「…………元人間だったことしか、覚えていない」


 思わず、ユラとキルトが見えない方の手で、冷凍パンチの準備をしてしまった。しかしそれを引っ込める。
 間違いない。この子が、この子が……あっちの世界にいた、人間のユラだ。

「……どうかした?」

「え、いや……。ちょっと、驚いちゃって……」

 それもそうだよね、とキルトが笑うと、ユラも小さく笑った。
 どうしよう。今ここで抹殺するのは容易い。けど……今ここでユラを殺したら、私は行動できにくくなる。……それどころかお尋ね者扱いだ。駄目だ。今はおさえなければ。
 するとキルトが私の方を見た。

「ねぇ、よかったら僕らと一緒に探検隊にならない?」

「…………え?」

 探検隊を、一緒に? ……つまり、ユラとの傍にいて、監視ができる?

 無意識に、頷いていた。ホントに、無意識で。
 喜んだキルトの顔と、何も知らずに私を歓迎しているユラを見ると、胸が痛んだ。やめておいたほうが、よかったかな。
 思わず、2匹から目を逸らしてしまった。

 それからユラを監視するという名目で私はユラとキルトの探検隊に入った。
 けど私が欲しい情報は全く入らないし、抹殺対象のユラを殺すことも出来なかった。ただユラとキルトについていって、依頼をこなして、普通に過ごした。
 怪しまれないためにも、笑わないと。楽しまないと。じゃないと、怪しまれてしまう。

 大丈夫、ちゃんと刺客の使命を果たすときがきたら前の私に戻るから。

 それが、いけなかったんだ。

「いやだ、なぁ……」

 ヨノワールがギルドに来て、合流した。
 私がヨノワールの知り合いとバレたら色々と面倒だと思い、何もいわなかった。ヨノワールもそれを分かってか、何も言ってこなかった。

 それからヨノワールにユラ達にバレないように会って、ユラのことを話した。
 ただ……私は、渋ってしまった。ユラの能力がおそらく時空の叫び≠セと分かっていたにも関わらず、確信できていないので、本当にユラかどうか分からないと言った。
 けれど……ヨノワールは、ユラにそれを実証させ、確信してしまった。

 その後に私に下された命令は、引き続きユラの監視。
 それに頷いて、私はユラの監視を続けた。ユラとキルトは、何も知らずに私に笑いかけてくる。

 私は、貴方たちの敵なんだ。……敵、なんだ。

 ようやくジュプトルが姿を現し、ギルドでも捕まえるとなったとき、ユラは難しい顔をしていた。
 ……あぁ、やっぱり記憶がなくとも何となく覚えているのかもしれない。

 そしてヨノワールが正体を打ち明け、伝説のポケモン3匹とともにジュプトルを捕まえることになった。
 それが成功したら……私は、ユラとキルトの敵になる。
 もう、仲間ごっこも、おしまいだ。

「……や、だな…………」

 何を言っているんだろう、私。
 死にたくないから、刺客となったんじゃないか。そしてユラは、未来をかえて私たち未来のポケモンを消そうとしている、私が殺すべき、相手。

 ……何で、こんなにも胸が痛むんだろう。
 どうして、涙がでそうなんだろう。

 裏切った私を知ったら、皆はどう思うかな。
 私を最低と罵るかな。私を敵として今ジュプトルにむけている目で見るのかな。

 私は、独りぼっちに逆戻りなのかな。もう、一緒に笑いあうこともできないのかな。


「いやだっ……」


 ……お願い、裏切り者の私に、優しくしないで。

 私が、おかしくなってしまうから。私が、潰れてしまいそうだから。





夢に溺れすぎた

(こんなにも苦しむことになるなんて、思ってなかったの)





 死ぬのと、独りぼっち。どっちを選ぶか。
 難しすぎるよ、カミサマ。







情が湧いてしまってどうすればいいか分からなくなった女の子。
ただ死にたくなくて刺客になったけれど、一緒にいるうちに主人公と仲良くなってしまって殺せなくなってしまったというネタ。



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