彼女はヒーロー

 後ろを、振り返った。私は、私のできることをしなければならない。

「……いってきます」

 そう呟いて、また前をむいて歩く。
 何でもいい。とにかくポケを稼がなければならない。どんな仕事でも構わない。ダンジョン巡りをするだけでもいい。それだけで、ポケは稼げるはずだから。

 森の近くまで来る。この先は、私は行ったことがない。ダンジョンになっていて、危険だと言われていたから。
 けれど、この先を進まなければ駄目だ。じゃないと、前に進めない。

 鞄を見る。強敵に会った際は、道具でも何でも使って逃げる。戦ってなどいられるものか。自分の身さえ守れたら、それでいい。
 大量の道具を鞄に入れてきた。おそらく、これだけあればダンジョンを抜けることなど容易いはず。

 ふぅ、と息をはき、ダンジョンに入っていく。






「……あれ、何処だろう。こっち……かな?」

 地図を見ながら歩く。ママに言われたとおりに進んで……たはず。
 大きな山があるからそれを越えて、越えたら海に沿って……それから……。と、教えられたとおり進んでたはずなのに。

 いつの間にか、全く分からない場所にいた。

「んん……何かまた山が見てきた……」

 あたしが間違っているのか、ママが間違っているのか、地図が間違っているのか。
 ママが間違ってることはないと思う。だとしたらあたしが地図か……。

 どれくらい進んだだろう。山を越えて海に沿って歩いてもちっともつかない。かれこれ2日は歩いている。
 ママが言うには3日もあれば着くって言ってたけど……着く気がしない。
 どういうことだろう。やっぱりあたしが間違ってるのかな? それとも地図が古いだけとか?

「何処だろ、ここ……」

 2度目の言葉。けれど誰からも返事はない。
 やっぱりママに着いてきてもらった方がよかったかもしれない。見栄を張って「大丈夫、あたしだけでいけるよ!」なんて言ったのが間違い……ううん、いけるもん!
 パパだって、きっとこういうこと日常茶飯事に違いない。きっとそうだ。だから別に少し迷ったくらいでへこたれちゃ駄目だ!!

 とりあえず山は越えない方がいいのかな。じゃあ違う方向に……でも、海を沿えって……。でも海を沿うには山が……。
 あれ、これどっちだろう。どっちに行けばいいんだろう。

「……あれ?」

 メフィーレ・アペーディヌ。只今 迷子になってます。

「……あぁぁぁああぁぁぁぁぁ!! やっぱり地図の見方をもうちょっと詳しく聞いとけばよかったぁ!」

 そう言ってももう遅いのだけれど。しかし此処は何処だろう。
 何度 地図を確認しても分からない。ていうか自分がいると思っている場所はあってるんだろうか。
 正直ちょっと泣きそう。だってまさか迷うとは思ってなかったんだもん……。

「普段けっこう外でてるから大丈夫なんて思うんじゃなかった……」

 これじゃプクリンのギルドに行く前に行き倒れちゃう……。
 そんなことを思いながら、でも弱音を吐いても仕方ないと心の中で唱えながら進む。地図を見てたらきっと分かる場所に……。

 そんな行動が間違いだった。
 地図を見るなら止まって、進むなら前を見て進まなきゃいけないのに、地図を見ながら進んだから。

「えっと……きゃっ!?」

「とっ! 何すんだクソガキ!!」

 まずった。さっきの道まで誰もいないから、誰もいないと思っていた。
 目の前には大きなポケモン。確か――ゴローニャ。ギロリとあたしを睨んでいる。

 まずい、これは非情にまずい。タイプ的にも。それに誤っても許してくれなさそうだ。どどどどうしよう!?

「ご、ごめんなさっ……きゃ!」

「あぁ!?」

 頭を掴んで持ち上げられる。つい持っていたバッグを落とし、中の物がバラバラと地面に落ちる。
 どうしよう、どうしよう……! パパ、ママ……誰、誰か……!!

 涙目になりながらギュッと目を瞑ったときだった。


「エナジーボール!!」

「なっ――ぐあぁぁああぁぁぁ!!」


「……え? きゃあ!」

 ゴローニャの苦しそうな声が聞こえ、いきなり地面に落とされた。目を開けると目の前に倒れているさっきのゴローニャ。
 何が、おこったんだろう。何で、倒れてるんだろう?

 何がなんだか分からなくて目を白黒させていると、後ろから歩く音が聞こえた。
 後ろをむくと確か……フシギダネ、が歩みをとめて何かを拾い、キンッとそれを弾いたためにあたしにも何を拾ったかが見えた。

(ポ、ポケ……?)

 そしてそのままそれは弧を描いて下に落下していき、見事にフシギダネが背負っていたリュックに入った。
 そして、一言だけ。

「……完了」

 言葉の意味はよく分からなかったけど、1つだけ分かった。

 彼女は、あたしを助けてくれたんだ。

(か、かっこいい……!!)

 憧れを、強く抱いた瞬間であった。





彼女はヒーロー
(でも凛音はただ落ちたポケを回収しにきただけだったんだよね!)





「あ、あの!」

「…………はい?」

 それからあたしが凛音を探検隊に誘うまで、30秒後。
 あたしが進んでいた方向は逆方向だと呆れられるのは、その5分後の話だった。






雄将さん、どうだったでしょうか。凄い駄文ですみません……。
凛音はメフィのポケが落ちた音を聞いた瞬間にとんできただけです(笑)
因みに凛音が探検隊をオッケーしたのは稼げると確信したからだとか。
リクエストありがとうございました!





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