「はあ〜、疲れた〜」


洗面所から帰ってきた一二三は、ジャケットを脱いでそんなことを言った。

「つーかどっぽちん、寝てなくていいの? 明日も仕事っしょ?」一二三は脱いだジャケットをソファの背もたれにかけながら問いかける。「ああ・・・・・・疲れすぎて寝れなくてな・・・・・・」独歩は苦笑をこぼす。


「というか、一二三。あの子、どうしたんだよ・・・・・・誘拐じゃないだろうな」
「ちげーしっ!! 親切で連れてきただけだしっ!!」


じとりとした目で一二三を見れば、一二三は「どっぽちん、ひでーっ!」と唇を尖らせてブーブーと文句を連ねた。取り合えず独歩は最悪の事態を否定され、安堵の息をこぼす。


「あの子さあ、一人でふらふら歩いてたんだよ、歌舞伎町で。しかも傘もないみたいでずぶ濡れでさあ」
「こ、こんな夜更けに子供が一人でか!?」
「この間もあの子を見たことあんだけどさあ、そん時も一人ずぶ濡れで歩いてて。そんで声掛けたらふらついてて、熱もあるみたいで。さすがにほっとけねーじゃん?」


「だから連れてきちった」えへへ、と笑って一二三は事の次第を独歩に伝えた。
事と次第によって怒るつもりだったが、理由が理由のために独歩は一二三を怒ることができなかった。自分も一二三と同じ状況だったら同じことをしていたかもしれない。


「あ、独歩ちん、あの子に着替え持ってってくんね? 俺っちの服てきとーに持ってっていいからさ」


一二三は今思い出した、と言わんばかりにそういう。そのまま一二三はキッチンに向かってエプロンを付け始めた。


「いや、それならお前が持ってったほうがいいんじゃないか? お前の服だし」
「俺っちこれからご飯作んねーといけないからさ」
「・・・・・・わかった」


「具合悪いし、お粥がいいかな。風邪薬ってあったっけ・・・・・・?」なんて独り言をつぶやきながら準備を始める背を見て、独歩は早々に一二三の部屋へと向かった。




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