「んじゃ、神影ちんの風邪が治ったことと、一緒に住み始めることに、カンパーイっ!!」


コツン、と飲み物の入ったコップを掲げ、乾杯する。一二三と独歩はコップにビールを注いでいて、神影はウーロン茶を飲んでいた。

「神影ちん、好きなの食っていいかんな!」一二三はテーブルに広がる多くの料理を指さしてそう言った。一人でこんなに多くの美味しそうなものを作るなんて。一二三は料理が大の得意みたいだ。「あ、これ食べる?」一二三は小皿にのっけて神影に差し出す。

一二三からお皿を受け取って箸を手に取る。パクリ、口の中に入れる。スパイシーな味が口の中に広がり、美味しさのあまりに思わず目を輝かせた。


「どうどう? 俺っちの自信作!」
「お、おいしい」
「やっぱり、お前の飯は美味い」
「でしょでしょ〜!」


一二三は自慢げに笑う。

遠慮しないで、という言葉に甘えて、神影はパクパクと料理を口に運んだ。目を輝かせて食べる姿は本当に小さな子供みたいで、一二三と独歩は微笑ましくそれを眺めた。


「一緒に住むことになったんだし、生活用品も買い揃えなきゃな」
「そうだな〜。服とかタオルとか、あっ、あと寝るところも考えなきゃ」
「ベッドかあ・・・‥でも部屋もないし・・・・・・」


一緒に住むとなれば必要なものを買いそろえなければならない。一番の問題である寝る場所に頭を捻る独歩と一二三に「ソファでいいよ」と神影は言う。


「え〜、でも寝にくくない?」
「身体も痛めるだろうし」
「大丈夫だよ。ベッドとか買い揃えると高いだろうし、必要最低限のものさえあれば大丈夫だから。あまり気にしないで」


それにあのソファは大きい。小柄な神影一人寝るのには十分だった。


「うーん・・・・・・じゃあ、俺っちのベッド使っていいよ! 俺っち仕事夜だし、ちょうどいいんじゃね」
「お前が休みの時はどうするんだよ」
「んー、そん時は・・・・・・一緒に寝るとか?」
「ばっ!!? お、お前なあ!!」
「はは! んまあ、そん時はそん時に考えるし、ひとまず保留ー」


独歩ははぁ、とため息を落とした。

箸を止めてコップを手を伸ばすと、コップが空になっていたことに気づいた。飲み物を取ってきても良いかと尋ねると、独歩は自分が持ってこようかと言った。それを断って冷蔵庫へと向かう。背後から一二三が好きなものを飲んでいいと言った。
冷蔵庫には缶のお酒とボトルに入ったお茶があった。好きなのいいって言ってたし、神影は缶を手にもって元の場所に戻った。

プシュッ、と缶のふたを開け、コップに注ぐ。コップの中で炭酸がシュワシュワと泡を立てた。


「ちょっ! ストップストップ!!」
「おまえっ! それはダメだろう!!」


一二三と独歩は急いで神影の手から缶とコップを奪い取る。神影は目を丸くして、二人を交代に見た。


「え、だめなの?」
「駄目に決まってっしょ〜! お子様にはお酒はまだ早いでーす」
「でも飲んだことあるし、酔ったことない」
「飲んじゃダメだろ・・・・・・酒は大人になってからな」


取り上げられたコップと缶を見た後、神影は少しムッとした顔で一二三と独歩に目を向けた。「お子様じゃない・・・・・・」不満げな声で呟く。そこで一二三と独歩は、神影にまだ年齢を聞いていなかったことに気づく。


「そういや、神影ちんって今いくつなの?」
「19」


一二三が「19か〜」と復唱した後、独歩は「19・・・・・・大学生か。高校生ぐらいかと思った」とつぶやく。2人の予想していた年齢より、少しばかり上だったようだ。こうやって年齢を若く見られることは多々ある。神影は慣れていた。


「2人はいくつなの?」
「俺と一二三は今年で29だな」
「10こ・・・・・・もう少し若いと思った」
「地味に傷つくんですけどー」


結局、後一年はお預けだと言われ、神影はお酒の代わりにジュースを渡された。後一年なんて誤差だと少し不満に思ったが、美味しいごはんがあるため、神影は口いっぱいに頬張って一緒に不満も飲み込んだ。



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