08
「どうしたものか…」
只今下校途中であります、ユイです。
いつも通りイヤホンを耳に装着しながら帰っていたら、道端に何やら人が倒れていました。
どうしたものかって言うか、助けなきゃじゃんかよ。
「あの、大丈夫ですか?」
イヤホンを外し、尋ねるが返事は無し。
これ、ヤバくね?
「とりあえず救急車…」
そう言いケータイを取り出した瞬間、グーとすっとんきょうな音が耳に入った。
「……」
「助けて下さってありがとうございます。お腹がぺこぺこで死にそうだったんですよー」
「はあ…そうですか…」
にっこにこしながらホワンホワンと花を飛ばしてる赤髪さんは「楽しみですー」と心待ちにしておられた。
「どうぞ」
今日の晩御飯であるカレーを赤髪さんの前に置けば、彼は微妙な表情をしていた。
もしかして、カレー嫌いなのか?
「あの、嫌いでしたか?」
「いえ。ただ…これ、レトルトですよね?」
「そうですけど」
「……」
「不満なら食べなくていいですよ」
「……レトルトって正直苦手ですけど…仕方ないですね」
そう言い、スプーンを握りもくもくと食べた。
うん、むかつくコイツ!!
何だよせっかく人が晩御飯を犠牲にしてまで出してやったのに!
おかげで今日の私の晩御飯TKGだよ!!
「そういえば、名前何て言うんですか?」
「私のですか?」
「当たり前じゃないですか〜。此処には僕と君しかいないんですから」
いちいちむかつくなこの男。
「白河ユイですけど…」
「普通ですね」
「あはは、普通ですみませんねぇ!!」
思わず声荒くなったけどこれは仕方ない。
誰でもそうなるわ。
「ごちそうさまでした〜」
やっと食べ終わったか。
それなら早くお帰り頂きた、
「食後のデザートも欲しいです」
普通ご飯を食べさせてもらって、更にデザート要求ってどんだけわがままなんだよ。
見た目は大人頭脳は子供か。逆コナンか。
…あ、そういえば。
「カルメ焼きならありますけど…」
「うわぁ、いいですよねカルメ焼き。僕大好きです!」
カルメ焼きをやれば、赤髪さんは一口かじり「美味しい!」といって手にあったカルメ焼きはすぐに姿を消した。食べるの早いな。
「すごく美味しかったです!誰が作ったんですか?」
「私ですけど」
「すごい!ユイ、カルメ焼きの達人さんだったんですね〜」
「え。そう、ですか…」
何だよ、すごく嬉しいじゃないか。
カルメ焼きでこんなに褒められたの初めてなので少し照れ臭い。
「本当に美味しかったです〜。また来ますね」
ニコリと微笑みながらそう言って立ち上がり、部屋を出ようとする赤髪さんに「あ、はい」と返事をした。
…ん?また来ますね……え。
また来るの!?
それは嫌だよ!!
赤髪さんの後を追って玄関を開けるが、既に姿はなかった。
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