さよならのかわりに
遊矢がデュエルに勝利する。

モニターが表示された。

「話は聞かせてもらったぞ、榊遊矢」

「零次」

「GODを破棄する暇があるならはやく来い。城前がお前達のデュエルを知り目にGODの顕現で出現したゲートを越えようとしている」

「えええっ!?なんだよ、それ!」

「GODの力で元の世界に帰ることが叶わなかった以上、この世界に用はないということだろう。イブたちから転位装置をもらっている上にGODのデータを回収している今の城前ならばこの世界にすぐ帰ることが出来るからな。ならばGODを作ったやつの所に行くに違いない」

「うわあ、勝利の余韻に浸る暇すらないとか城前のやつー!ていうか後ろのみんなは?」

「なにをいってるんだ、黒咲と沢渡は私の部下だぞ」

「素良は!?」

「あいつは城前についていったようだ。まだ夢を捨てきれないらしくてな」

「他の奴らはいいのかよ?」

「私は生き直すことが夢だったからな」

「私はイブとアダムがまた会えたからこれでいい。次は素良と城前を止めるために動くだけだ。一応仲間として認めていたつもりなのでね。それに私達の世界にGODが出現したのが全ての悲劇の始まりなのだから報復する機会があるならば乗るだけさ」

「いい性格してるなあ」

「ユーゴの末裔らしいからな」

「.......えっ?」

「ユーゴの嫁さんて誰だったか聞いても大丈夫だよな?ユーゴもう死んでるし」

「バタフライエフェクトは起こらないし」

「おいばかやめろ、ふざけんなー!」

遊矢は通信を切った。するとようやく周りを形成していたはずのアクションフィールドが解体されていく。跡形もなくなってしまったころ、かけてくる足音がする。

「遊矢!」

ずっと同行してくれていた柚子の声がした。

「デュエル勝ったのね、おめでとう!これでGODはもう大丈夫ってこと?ねえ、これからどうするの?」

「いやあ.......それがさ」

「?」

「ほんとはこれを破棄して、無力化するつもりだったんだけど」

「けど?」

「直ぐに行かなくちゃいけない所ができちゃって」

「えええっ!?今度はどこよ!」

「GODをつくったやつらの本拠地さ。GODを破壊してもそいつらがいる限り悲劇は繰り返されてしまうからな。だから止めに行くんだ」

「遊矢.......」

「城前のやつ、そいつらと手を組むかもしれないんだよ。だから止めに行かないとな」

「えっ、城前さんが!?」

「うーん、話せば長くなるんだけど素良みたいな複雑な事情があったらしいんだよ。転位装置もらってちゃっかりワンキル館の仕事も続けながら新天地に行こうとしてるからさ。止めなきゃいけないだろ?」

「遊矢だけで?」

「いんや、今度はみんないるよ。零次たちも蓮たちも。みんな城前を止めたいし、GODをつくったやつらを倒したいし、やりたいことは同じなんだ。だから早く来いって」

「そっか.......」

「柚子?」

「蓮さんたちが仲間になったってことは、転位装置が使えるのよね?」

「まあ、GODのカードを破棄しなきゃね」

「じゃあ、アタシ、待ってるわ」

「えっ」

「転位装置があるなら帰ってこれるじゃない。もしこの次元に帰ってきた城前さんの動向を把握するのにまた戸籍無しの不審者になるつもりなの?」

「うっ.......言われてみればそうだった」

「ふふふ、そーいうわけで遊矢。アンタのアルバイトは継続だからね!」

「こ、今度帰ってくる時は500円から値上げして欲しいなあ、なんて」

「考えとくわ。だから早く帰ってきなさいよね」

「わかったよ」

遊矢は柚子とハイタッチしたのだった。

ゲート前まで迎えに来てくれた柚子と遊矢は別れを告げる。

南極からの大冒険を終えて、休学から復帰した柚子はかつて遊矢と出会った公園で道化師みたいな格好の少年を見つける。遊矢の白いローブと空目して、声をかけたら人違いだったのだが遊矢とよく似た少年だった。話を聞けばどうやら進学のために田舎から出てきたばかりであり、お世話になるはずの寮までの路銀をスリにあって1文無しになってしまったらしい。大道芸で資金を集めていたという彼がデュエルホルダーもちだと気づいた柚子はなんとなくデュエルは出来るのかと聞いてみた。

「もし良かったらウチにこない?うち、デュエル塾をしてるんだけど今講師を募集してるのよね。実力によっちゃバイト代弾むわよ。住み込みでどう?」

柚子の言葉に少年は目を輝かせた。

「おれ、榊遊勝っていうんだ。その話乗った!詳しく聞かせてくれ!」


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