胎動4

花園神社(はなぞのじんじゃ)は、東京都新宿区にある神社である。旧社格は郷社。倉稲魂命(花園神社)・日本武尊(大鳥神社)・受持神(雷電神社)の3柱の神を祀る。


新宿の街の中心にあり、新宿総鎮守として江戸時代に内藤新宿が開かれて以来の、街の守り神として祀られている。また敷地内では各種劇団による催し物などが定期的に開かれ、新宿の街の文化の一翼も担っている事でも知られている。朱塗りの鮮やかな社殿は、参拝客の他、休憩場所や待ち合わせ場所として使われ、当社に人影が途絶える事がない。

創建の由緒は不明であるが、徳川家康が江戸に入った1590年にはすで存在しており、大和国吉野山よりの勧請と伝えられている。その後、当地に内藤新宿が開かれるとその鎮守として祭られるようになった。

元は現在地よりも約250メートル南にあったが、寛政年間、その地を朝倉筑後守が拝領しその下屋敷の敷地内となって参拝ができなくなった。氏子がその旨を幕府に訴えて、尾張藩下屋敷の庭の一部である現在地を拝領し、そこに遷座した。そこは多くの花が咲き乱れていた花園の跡であることから「花園稲荷神社」と呼ばれるようになったと伝えられる。また、真言宗豊山派愛染院の別院・三光院の住職が別当を勤めたことから「三光院稲荷」とも、地名から「四谷追分稲荷」とも呼ばれた。

近年は、消えつつある「見世物興行」に、境内を提供している。

そして、今私達が向かっている花園神社の酉の市は、江戸時代から続く年中行事で、開運招福・商売繁盛を願うお酉さまは、もと武蔵野国南足立郡花又村(今は足立区花畑町)にある鷲神社にその起源があるとされている。大鳥神社の祭神である日本武尊が東夷征伐の戦勝祈願をし、帰還の時にお礼参りをしたことにちなみ、日本武尊の命日である11月の酉の日に行われるようになった。商売繁盛の熊手を売る露店商のにぎやかな声は、師走を迎える街に欠かせない風物詩である。

仏教では、1235年の11月の酉の日に、日蓮が現在の千葉県にある小早川邸宅に滞在していた時、鷲の背に乗った鷲妙見大菩薩(わしみょうけんだいぼさつ)が空を駆けているのを見たことに由来していると言われている。その際には、国家の繁栄を予見するかのごとく、金星が光り輝いたそうだ。

毎年60万人もの人が訪れる市の日は花園神社名物の見世物小屋を観るチャンスでもある。

同社のご祭神は日本武尊(ヤマトタケル)で、その昔、東夷討伐の帰路に花又の地に立ち寄り、戦勝を祝したことが縁で、尊が伊勢の能褒野(ノボノ)で亡くなった後、神社を作りお祀りしたと伝えられている。

中世に後三年の役(1083年)が起きると、兄源義家を慕って清原一族平定に向かった新羅三郎義光が、武具を奉納し、戦勝を祈願したことから武神として尊崇されるようになった。

江戸時代になると、日本武尊のご命日といわれる11月の酉の日に、武家は綾瀬川を船で上り、町人は徒歩か馬を使って詣でていた。しかし、江戸より遠かったため、千住の赤門寺で「中トリ」、浅草竜泉寺で「初トリ」が行われ、吉原を背景とする浅草の大鳥さま、大鷲神社と隣接する鷲在山長国寺が繁昌するようになった。

「酉の市」は関東特有の行事だ。

日本武尊を祭神とし、尾州徳川家に祀られたと伝わる新宿大鳥神社は、花園神社の境内に鎮座されている。その社紋(神社における家紋)は、「鳳凰の丸」が用いられている。

だから、新宿のど真ん中にある花園神社は、江戸時代が始まる時から新宿の「総鎮守(守り神)」とされている神社なのだ。

「いよ〜おっっ!!チャチャチャン、チャチャチャン、チャチャチャチャンチャン」

威勢のよい掛け声でにぎわう「酉の市」がそこにはあった。独特の雰囲気で大いに賑わっている。なんといっても裏手には歌舞伎町、新宿二丁目にも近い立地。ホスト風のイケメン、マツコデラックス風のオネエ、セクシーな若いお姉さん、長渕剛ちっくなおじさん、スーツを着た社長風の方々、色んな方々が集いながらも和気合い合いな雰囲気だ。

「貴方は人魚を見たことがあるか?」という問いかけに、
「テレビじゃみれない演芸の数々をご覧になれます」

もう気にならざるを得ない。ポケーっと見てるとお姉さんに声をかけられる。

「はい、お兄さん、見てらっしゃい!」

マイクをもって軽快なトーク炸裂の呼び込みのお姉さん。その呼び込みに吸い込まれるように人がどんどん入っていく。

お祭りといったら屋台だ。花園神社の酉の市は境内はもちろん、靖国通り沿いにもかなりの数の屋台がビッシリ並んでいる。

「おせ〜ぞッ!おま......」

早く行きたがったのに醍醐と緋勇に止められていたのか、不満げだった蓬莱寺の機嫌が一瞬でよくなった。口笛すらふいている。わかりやすくてなによりだ。

「マリアせんせに、エリちゃん!それに桜井たちまでどーしたんだよ、みんな揃って!」

「こうして浴衣で揃ってこられると壮観だな」

「よく似合ってるよ、みんな」

男性陣の反応に桜井と美里はホッとしたのか笑った。桜井が美里を押し出すものだからふらついた美里を緋勇がささえにはいる。美里は恥ずかしいのか耳まで真っ赤だ。アラアラ、とマリア先生は笑っている。天野記者とマリア先生が友達だと知った蓬莱寺が喜んでいる。桜井は花より団子なようではやく行こうよ、と先頭になる位置にいた醍醐のところまで歩きながらみんなを促している。醍醐は生真面目な顔を崩してはいないが明らかに意識しているようで挙動不審気味だ。

「いい感じな写真が撮れそうな予感がするわ〜。ほら、槙乃も行きなさいよ」

遠野に押されて私も桜井たちのところにむかう。桜井からPTAの広報誌に載るうんぬんを聞いたらしい醍醐は、遠野が浴衣でないことが疑問らしかった。

「いーのよ、いーのよ。浴衣なんか着たら自由に撮影できないじゃない。だいたいもってないもの、あたし」

「貸してあげますっていったのにこれなんですよ、アン子ちゃん」

「あたしはいーの、柄じゃないもの」

けらけら笑いながら遠野は私達を遠慮なく撮影している。そのうちのどれくらいがトリミングされて裏で売りさばかれ、新聞部の資金源になるのだろうか。

そうこうしているうちに桜井がたこ焼き屋さんの前に釘付けになっていた。

「おいしそーだねッ!」

「いいものみせてもらったし、おごるよたこ焼き」

「えッ、いいの!?」

「みんなで食べよう」

「いやった〜!ありがとう、ひーちゃん!」

「もう、小蒔ったら。そんなにはしゃいだら浴衣がみだれちゃうわ」

「え?あ、ごめーん、つい」

美里が桜井の浴衣を整え始める。呆れている蓬莱寺たちを横目に緋勇は会計をすませていた。

屋台のラインナップはジャンボフランク、今川焼、じゃがバターお好み焼き、やきそば、甘酒、おやき・・等々という感じで種類豊富。きっと食べたいものを食べれるはずだ。

19時を過ぎると人もぞくぞくと増え、お祭りが一段と賑やかになる。やはり夜になるにつれ人が集まり、境内も露店通りもお祭りを楽しむ人で溢れている。

子供が大好きなわたあめや懐かしい味のベビーカステラ、カラフルなチョコバナナなどの甘い物や定番の焼きそば、お好み焼きの他にも、タレの違いを楽しめる鳥皮ぎょうざやあゆの丸焼きなどもある。

江戸時代や明治の文明開化辺りの歴史を辿っていくと名前を目にする「見世物小屋」は現代では廃れてしまい、今も興行をしているのは1社のみとなっているらしい。レトロな雰囲気の芸能を目で見て肌で感じられる絶好の機会だ。

遠野は焼きそばを緋勇にオネダリして、醍醐イチオシのくじ引きをして、指輪があたった緋勇は美里にあげていた。そのままりんご飴をおごってあげたりして仲がよくてなによりである。

「いい写真がとれたわ〜、これは号外でも出そうかしらね?いや、裏ルートで捌いた方が......?」

物凄い勢いで脳内そろばんをはじいている遠野が安定で笑ってしまう。

「まーちゃん何食べる?」

「そうですね......人形焼にします?私も甘いものが食べたくなってきました」

「いいね〜、餡子にする?クリーム?」

「どっちも買いましょう、せっかくですから」

沢山入ったやつを買おうとしたら緋勇に先を越されてしまった。

「そんな、悪いですよ龍君。さっきから龍君ばかり」

「気にしない、気にしない。みんなのお金なんだから」

緋勇はそういって笑った。どうやら旧校舎で稼いだお金を預かっている緋勇はちゃっかりここから出していたらしい。どうぞとさしだされ、私は有難くもらうことにしたのだった。


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