「えーみー、お前な。自分から誘っておいて、自分はそうそうに浮気か？」

「違っ......違いますよっ、そんなつもりじゃ......」

「へえ？最近、やたら夕薙や皆守から呼び出しが多いみたいだが？」

「......」

「また黙りか、江見。どうした、何かあったんだろ？先生に相談してみろよ。な？」

「......ごめんなさい」

「はあ〜......ったく、俺はそんな顔させるつもりで言ってるんじゃないんだけどな。それだけはわかってくれよ、いじめたいわけじゃないんだからな」

「はい」

「何があったのかはしらんが、あんま思い詰めるなよ？心配してるんだからな？恋人としてさ」

恋人であると意識した瞬間に、江見は身体に燻る熱が僅かに増した気がした。

「はぁ……」

堪え切れずに、噛み締めていた唇を解き、息を吐き出す。静寂に包まれて、江見は無意識のうちに萌生を見上げる。その瞬間を待っていたかの様に、萌生が江見の頬を優しくなであげた。

「......お前な」

「……ふっ……っ…」

あーくそとボヤきながら、萌生は次にくる刺激を待ちわびる江見の反応をわざと数秒待ってから、唇を落とし、強く吸い上げた。

「……んっ！」

甘い声が漏れた。今まで経験した事の無い快感を知覚するまえに脳へと響く快楽に力が抜けていく。その敏感な反応に、わざと息がかかる様に薄く笑うと、萌生は首筋に口付けた。顎へと舌先で辿り、唇へは触れずに、逆に下へと進路をかえ鎖骨の上へ。窪んだ所に軽く歯をたてながら、両手を脇から潜り込ませて背中へと這わせた。

「ん、……んんっ！」

手の平で肩を優しく撫でれば、背がゆるりとのけ反った。目の前に晒された首筋をしつように舌でなぞり、耳へと向かう。わざと音をたててしゃぶりつけば、声が上がった。

「あぁ……っ…」

熱のこもった吐息が溢れると共に、くたりと体から力が抜ける。それを、背中を愛撫していた萌生の手がすかさず受け止めた。身体を揺らす江見の反応をもっと引き出したくて、指先だけで擦る動作を繰り返す。

「で、この痕は誰からだ？」

「……っ…ひっ………あぁ…」

江見は嫌々と首を振る。とても機嫌の良い声で、萌生は問いかける。

「まだ新しいしな......昼休みか？」

「………やだ、せんせ！」

答えなんてはなからあてにしていない。

「ああっ！」

舌で押しつぶし、ふっと力を抜いてねっとりと舐めあげる。次に唇で挟み、先端だけを舌でくすぐる。指の動きも止まらない。舌の動きに合わせて擦れば、抑え切れ無い嬌声が零れ落ちた。

ゆっくりと江見の足が開いていき、萌生が視線を落とせば、制服の前は膨らみ始め、窮屈そうだ。そこに萌生は手を伸ばす。

与えられる刺激に耐える様に江見は萌生に頭を押し付けた。なだめる様に撫でる。脇腹を行き来しつつ、時折戯れに愛撫する。それぞれ好き勝手な動きで江見の体を愛撫する。そして、ほんの些細な情事の痕跡も見逃さず執拗に弄る。

江見にとって、それは拷問そのものだった。昼間にあったことを思い出してしまいそうになる。それだけは出来ない。脳裏にチラつく盗撮画像が江見からゴメンなさいを奪っていく。指や舌の僅かな動く度に甘い感覚が身体を走り抜けていく。身体も声も、抑え切れない。

「んっ……んあ......…ああぁっ」

また声が漏れる。押し寄せる甘い感覚に我慢が出来ずに、また声をあげる。
自分が感じている事も、抑え切れない声も、快楽に震えている身体も、萌生に余すことなく見られているという事実。江見は耐えることができなかった。

「はぁ、…せん、せ……っああ！」

萌生はベルトを外してチャックを下ろし、手を入れ始めてしまう。びくりと腰がゆれるのを笑いながら、今度は指で別の箇所をなぞる。

「気持ちいいだろ？」

項垂れた頭を抱きしめて、耳たぶを唇で挟み、息を吹き込む様に囁いた。こくこく頷く江見は耳まで真っ赤だ。

「な……？」

「…んっ、………ふぁ…」

脳髄に叩き込む様に、耳の近くで囁かれる声。その心底嬉しそうな声に、江見はこれが悪戯や気紛れでは無い事を知ってうれしくてたまらなくなる。掴む手に力が入る。江見はうなずいた。

「あぅ……ああぁっ……ん、ああっ！」

下着越しだったのに、今度は直接、もっと熱い場所を触られる。とっくに先走りで滑るモノを、躊躇なく握り、少し乱暴に擦る。江見はびくびくと腰が跳ねる。

「はやすぎるだろ、江見」

笑う萌生に江見は涙目で抗議する。

「だって......先生が......」

「……こんなもんじゃ、足りないだろ？」

はあはあ肩で息をする江見に萌生からのと言葉がそそがれる。手の平に受け止めたモノを、達したばかりのそれに塗り込める様に再び握られる。すぐに反応する身体に萌生は目を細める。すぐにいきそうになって、信じられない江見はギュッと目を瞑る。

「んっ……んっ……」

声を必死で噛み殺しながら、無意識に腰が縋る様にすり寄っていく。ただ襲い来る強い快感から逃れたくて、汗で滑る頬を押し付けた。

「……っ、…はぁ…あ……」

繰り返される吐息の熱さが萌生にじんわりと伝わってくる。思わず頬を包む様に手で触れ顔を持ち上げて、唇に口付けた。触れた瞬間、舌を潜り込ませ奥まで犯す。少しずつ江見も応じてきて、唾液を送り、唾液を吸い。舌同士でぴちゃぴちゃとわざと音をたて舐めあいながら、手の中で反り返るモノを指でつっと上から下へ滑らせた。

萌生が力を抜けば江見は床に転がるしかない。

上から押し付ける様に口付け舌根を捕らえて強く吸いながら、首筋を撫でていた左手を下肢へと伸ばす。片足を持ち上げ、放っておかれている中心へと指を絡み付かせた。休む事無く刺激を送りながら、じわりじわりと右手は後ろに攻略にかかる。

とろとろと先端から溢れる先走りを塗り込みながら、焦らずゆっくりと人指し指を潜り込ませて行く。

「ここも許したのかよ」

舌打ちされて、びくりと体が震える。
唇と指で江見の身体を蕩けさせながら、萌生は探るように中に指を入れて僅かに曲げ、内壁を掻き回す様にぐるりと廻す。じっと江見の反応を伺いながら、指を動かし続けていたが、ある一点に触れた瞬間、全身が震えた。

「ひ、ああっ」

「腫れてるじゃねえか、どんだけ可愛がられたんだよ江見」

執拗に弄れば、耐え切れない声が後から後から溢れ出る。

「ああっ、あっ、あああぁっ」

「他のやつにもこの声聞かせるとか何考えてんだよ、お前な」

「もう、やめっ……ん、ふぁっああっ、ぅんん……」

「ばあか、やめたらお前の体が覚えてるのそいつになるだろ。できるか、そんなこと」

強過ぎる快感に見悶える江見を見下ろしながら、萌生は指でコリコリするところを挟み、刺激する。かと思えば指でぐりぐりと押しつぶす。江見は逃れられない快楽に体をはねた。

「ほら、いけよ」

「んんんぅっ！」

優しい声で促しながら、亀頭の先端を強く擦ってやれば、江見は軽く仰け反りながら２回目の解放をむかえた。

「まだ足りないだろ？」

「ひいっ、あああっ！」

まだ快楽の余韻が残っているにも関わらず、江見はまた絶頂につれていかれてしまう。

まだ熱が燻っている身体は簡単に反応を返す。触れる手から逃れる様に身をよじるのを、わざとそのままに、流れる様に舌と手を体中に這わせ始める。
どんな事をしても逃げる事が出来ない。ひたすら感じる場所を擦られ、舐められ、弄られる。

すでに一通り、快感を引きずり出されている身体は、先程までの記憶を簡単に呼び起こし、より強い刺激を求めはじめる。

「あ、あ、やぁっ…っん」

胸の突起をくわえて、舌で嬲れば声があがる。無意識に差出す様に押し付けてくる身体に萌生は笑う。

「ここ、もっと感じたいんだろ？」

「ちがっ…......」

「ほら、俺の指を追ってくる」

「はぁっ……ん、ぁっ……あ…ああっ、あっ」

強過ぎる刺激に逃げようとする身体を抱え込み、萌生は責め続けた。

「うんっ、んっ、あ……」

そのうち、もう何をしても声があがるようになる。もう何処に触れられても快感が溢れ、江見は気が狂いそうだった。舌や指の動きを恐れながらも、もっと強い快感を感じたくて、力が入らないまでも腰が無意識にゆれていた。
名前を呼ぶその声に含まれる甘い響きも無意識だろう。

ただ萌生の熱を煽るだけだった。無意識に舌舐めずりをすると萌生は、なおも指で江見の弱い所を責めながらも、顔を降ろして下腹へと唇を落とした。

「っつ……！」

ぬめる感触に江見の身体が跳ねる。萌生はわざと紙一重の所を舌で辿り、足の付け根のラインを滑り降りていく。
わざと止まり、口を離さずにはぁっと生暖かい息を当てた。

「ああぁ！」

躊躇なく熱くなり始めているモノに舌を当てた。高い声が上がる。

「うあっ！……そん、ああぁ、っ……」

生暖かい口内の感触に、たちまち昇りつめていく。顔の脇にある両足が震えているのを、宥める様に手の平を這わせ、より大きく割り広げた。ざらつく舌で擦れば、嬌声があがる。

滲む先走りを吸い上げ、舌先で先端を転がす様にくすぐった。ガクガクと震える身体を押さえ付け、一度口を離して、尖らせた舌でベロリと舐める。

「…あぁ、あ……だめ、ですっ……もぅ…」

とろとろに解ける程の快楽を味合わせたくて、萌生は味わう様に全体に舌を這わせ、舐めしゃぶる。深く咥えると、唇をすぼめ顔を引きながら、強く吸い上げた。

「………あ───────！」

高く長く迸る声を発し、江見は閉じた目蓋の裏側に炸裂する光を感じながら、萌生の口内へ熱い精を吐き出した。

「も......やだ......せんせ、いきたくないです......」

「そうか、なら諦めろ。お前の好きな先生はな、案外嫉妬深いんだよ」